コラム

公開日 2026.08.26 更新日 2026.09.18

マスターリースとサブリースの違い|契約相手と2つの契約タイプ

マスターリース契約とサブリース契約は、契約を結ぶ相手が違います。

オーナーが署名するのは前者であり、後者は不動産会社と入居者の間で結ばれます。

この記事では、2つの用語を当事者関係で整理し、契約タイプの選び方と賃貸住宅管理業法で守られる範囲を、建築も管理受託も手がけない第三者の視点でまとめました。

マスターリース契約とサブリース契約の違い

マスターリース契約はオーナーと不動産会社が結ぶ一括借り上げの契約で、サブリース契約はその会社と入居者が結ぶ転貸借契約です。

違いは契約の当事者にあり、オーナーが署名するのはマスターリース契約だけです。

国土交通省も、2つの契約は対象も内容も異なると整理しています(出典:国土交通省「適正化のための措置」)。

以下で、それぞれの違いについて詳しく見ていきましょう。

契約当事者と賃料の流れ

賃料は入居者から不動産会社を経てオーナーに渡り、契約は二段構造になっています。

上段のマスターリース契約では、オーナーが貸主、不動産会社が借主です。

契約書では貸主をマスターレッサー、借主をマスターレッシーと呼ぶ例があります。

一方、下段のサブリース契約では不動産会社が貸主となり、入居者が借主になります。

入居者はエンドテナントと表記されることもあり、賃料を実際に負担する立場です。

この二段構造があるため、オーナーは入居者と直接の契約関係を持ちません。

空室が出ても不動産会社から賃料が支払われるのは、この構造が理由です。

なお、英語ではmaster leaseと表記され、転貸を前提とした借り上げを指します。

実務で同義に使われる理由と契約書での見分け方

2つが同義に扱われるのは、サブリースという語が管理方式全体の通称として広まったためです。

そのため、表題だけで契約の性質を判断すると誤読につながります。

確認したいのは、表題ではなく当事者欄と転貸に関する条項です。

当事者欄に自分が貸主として記載されていれば、その契約はマスターリース契約です。

借主である不動産会社に転貸を承諾する条項があれば、転貸を前提とした契約だと読めます。

一方、提案書ではML契約、管理業務を含む形はMLPM契約と略記される例もあります。

マスターリース契約と管理委託の違い

管理委託は管理業務だけを委託する契約で、賃貸借契約の相手が入居者のままである点がマスターリースと異なります。

空室時に賃料を負担する側と、入居者と直接契約する側が入れ替わる点が要点です。

手取り収入の水準も変わるため、以下では契約形態と手数料の2つの視点から比較します。

契約形態と管理業務の範囲の違い

契約の種類そのものが違い、マスターリースは賃貸借契約、管理委託は業務委託契約です。

管理委託では、入居者と賃貸借契約を結ぶのはオーナー自身です。

一方、マスターリースでは不動産会社が借主となり、入居者との契約はその会社が結びます。

また、空室が発生したときに賃料の減収を受け止めるのは、管理委託ではオーナーです。

入居者トラブルの一次対応や原状回復費用の負担先も、契約の種類によって変わります。

手数料と手取り収入の違い

手取り収入の差は手数料の水準から生まれます。

管理委託の委託料は家賃の5%前後、家賃保証型のマスターリースは10〜20%前後が目安です(2026年8月時点)。

料率は会社と契約により異なるため、提案書の数字をそのまま比較材料にしてください。

例えば、月10万円の部屋を10戸持つ物件なら、満室時の年間家賃は1,200万円になります。

委託料5%なら差引後は1,140万円、借上料率15%なら1,020万円で、差額は120万円です。

立地や想定空室率を変えた複数パターンの収益シミュレーションで比べると、判断材料がそろいます。

マスターリース契約の2つのタイプ

マスターリース契約には以下で解説するように、賃料固定型と実績連動型の2つがあり、空室リスクを負う側が変わります。

なお、呼び名は会社ごとに割れており、空室保証型・家賃固定型・パススルー型などの表記が混在しています。

見分ける手がかりは、空室が出たときに賃料が変動するかどうかです。

賃料固定型(空室保証型)

空室の有無にかかわらず、契約で決めた額が毎月支払われる仕組みです。

対価として、借上げ賃料は市場の家賃水準より低く設定されるのが通例です。

ただし、固定されているのは金額であって期間ではありません。

多くの契約には賃料の見直し条項が入り、数年ごとに改定の協議が行われます。

「35年一括借り上げ」という表現も、35年間賃料が動かない約束ではありません。

見直しの周期と改定の条件は、契約前に書面で確かめてください。

空室が続く局面ではこの型の効果が出ますが、満室が続く局面では手取りが伸びません。

実績連動型(パススルー型)

入居実績に応じた賃料がそのまま支払われるのが、この型の特徴です。

稼働が高い時期には固定型より多くの収入を見込める一方、空室が増えれば受け取る賃料も減り、空室リスクはオーナー側に残る形です。

ここで「管理委託と何が違うのか」という疑問が残ります。

違いは、賃貸借契約の相手が不動産会社である点と、一括で借り上げる関係が続く点です。

入居者との契約や日常対応は不動産会社が担い、オーナーは賃料の受け取りに集中できます。

空室リスクを自分で負う覚悟があるなら、手取りの上限は固定型より高くなります。

賃貸住宅管理業法によるオーナー保護

マスターリース契約は賃貸住宅管理業法の規制対象で、勧誘や説明の義務が事業者側に課されています。

同法は2020年6月19日に公布され、サブリースに関する規制は同年12月15日から施行されました(出典:国土交通省「適正化のための措置」)。

賃貸住宅管理業の登録制度を含む全面施行は、2021年6月15日です。

守られる範囲は契約前の情報提供が中心で、契約後の賃料水準まで法律が支えるわけではありません。

以下で、具体的に見ていきましょう。

特定賃貸借契約としての位置づけ

法律上の呼び名は特定賃貸借契約で、賃貸住宅管理業法第2条第4項に定義があります。

転貸する事業を営む目的で結ばれる賃貸住宅の賃貸借契約が、この特定賃貸借契約にあたります。

提案書にあるML契約やMLPM契約という略称も、実態が転貸前提ならこの契約です。

また、相手方の不動産会社が登録業者かどうかは、国土交通省の検索システムで調べられます(参照:国土交通省「賃貸住宅管理業者検索」)。

管理戸数200戸以上の管理業者には登録が義務づけられており、登録の有無は公開情報です。

サブリース事業者に課される規制

国土交通省は、事業者に対する規制を5項目に整理しています(出典:国土交通省「適正化のための措置」)。

内訳は誇大広告等の禁止、不当な勧誘等の禁止、契約締結前の重要事項説明、契約締結時の書面交付、書類の閲覧です。

家賃の減額リスクを伝えずに利点だけを説明する勧誘は、事実不告知として禁じられています。

オーナーからの解約に正当事由が必要である点を伝えない行為も、同じ扱いです。

また、契約前に交付される重要事項説明書には、家賃や契約期間などが記載されます。

受け取った書面に減額の可能性や免責期間の記載があるかを、その場で確かめてください。

なお、この重要事項説明から契約までは、1週間ほどの間隔を置くことが望ましいとされています。

マスターリース契約のメリット

オーナー側の利点は、収入の安定・業務負担の軽減・相続税評価の圧縮という3つに整理できます。

どれも空室保証や一括借り上げという仕組みから生まれる効果です。

後半のデメリットも同じ順序で並べているため、読み比べる形で確認してみてください。

空室・滞納による収入減のリスク軽減

入居者が退去しても、契約で決めた賃料が毎月入る点がこの型の魅力で、収支の振れ幅が小さくなる点は、長期の返済計画を描くうえで有効です。

金融機関が融資審査で収支の安定性を見る場面でも、材料として使える情報になります。

これから新築を検討する段階なら、着工前の事業計画に織り込む価値があります。

ただし、賃料が下がらない約束ではないため、後述の減額請求とあわせて読んでください。

入居者対応と契約手続きの負担軽減

入退去のたびに賃貸借契約を結び直す作業から離れられる点も、この方式の利点です。

加えて、入居者募集や賃料の集金、クレームの一次対応も不動産会社の仕事です。

ただし、手間が減る一方で、賃料の設定や入居者の選定に関する裁量も相手側に移ります。

手間と裁量は表裏の関係にあり、どちらを重く見るかで評価が変わります。

相続税評価の圧縮効果

賃貸に出している土地は貸家建付地として評価され、相続税の計算上は自用地より低くなります。

国税庁が示す式は、自用地としての価額から一定の割合を差し引く形です(出典:国税庁「No.4614 貸家建付地の評価」)。

このうち借家権割合は全国一律で30%です(2026年8月時点)。

一括借り上げで満室扱いになれば、賃貸割合が高く保たれる場面もあります。

ただし、評価は物件の構造や利用状況で変わるため、金額の断定はできません。

実際の試算は、税理士や所轄の税務署に確認してください。

マスターリース契約のデメリット

この契約の負担は手取り賃料の減少、賃料減額請求、解約の難しさの3つです。

いずれも空室保証を受け取る対価として発生する条件であり、必要以上に危険性を強調するものではありません。

ここでは、契約によって得られる安心と引き換えに、どのような負担を受け入れるのかを整理しましょう。

手取り賃料の減少

借上げ賃料は市場の家賃より低く設定されるため、満室が続く年ほど差額が大きくなります。

料率15%の契約で年間家賃1,200万円の物件なら、差額は年180万円です。

この180万円を、空室や滞納の減収を引き受けてもらう保険料として見る考え方があります。

判断の基準は、想定空室率と手数料率の組み合わせにあります。

賃料減額請求のリスク

家賃保証をうたう契約でも、借主である不動産会社は賃料の減額を請求できます。

根拠は借地借家法第32条第1項の賃料増減額請求権です(参照:e-Gov法令検索「借地借家法」)。

最高裁は2003年10月21日の判決で、サブリース契約にもこの規定が適用されると判断しました。

つまり、悪質な会社に限った話ではなく、法律上認められた権利という位置づけです。

減額の可否や相当な賃料額は、当事者の事情を総合して判断されます。

契約書の賃料改定条項に、改定の周期と協議の進め方が書かれているかを確認してください。

オーナーからの解約の難しさ

契約を終わらせたいと考えても、貸主であるオーナー側からの解約には正当事由が必要です。

借地借家法第28条は、当事者双方の使用の必要性や立退料の申し出などを考慮すると規定しています。

一方で不動産会社側は、予告期間を守れば契約を終了できる条項が置かれている例もあります。

なお、自己使用や建物の老朽化、立退料の支払いは正当事由の判断材料です。

売却や建て替えを出口に置くなら、契約前に解約の条件を確かめておく必要があります。

契約前に確認すべき条項

契約前に把握しておくべきなのは、契約期間・賃料改定・解約・費用負担の4つです。

どれも提案書の表紙ではなく、契約書の条文に記載されています。

各項目について、期間や金額などの条件を具体的に書き出しておけば、複数社の提案を同じ基準で比較しやすくなります。

契約期間と借上げ賃料の固定期間

「35年一括借り上げ」の35年は契約期間であり、賃料が固定される期間ではありません。

借上げ賃料の当初固定期間は2年から10年程度で設定される例があり、その後は改定の協議に入ります。

そのため、提案書に固定期間の記載がなければ書面で確認してください。

期間と条件をセットで書き出すと、他社の提案と比べられる形になります。

解約条項と原状回復費用の負担区分

中途解約の可否と違約金の額は、条項ごとに大きく差が出ます。

予告期間が6か月なのか、違約金が賃料の何か月分なのかなど、具体的な数字を確認しておきましょう。

また、原状回復費用と入居者募集の広告費を、どちらが負担するかも条項で決まります。

退去のたびに発生する費用のため、年間では10万円単位の差になる項目です。

借上げ賃料の高さだけで選ぶと、費用負担の差で実質の収支が逆転する場合があるため、比較表には料率と並べて、この2項目も入れておくとよいでしょう。

マスターリース契約の向き・不向きを分ける条件

向き不向きを分けるのは、空室リスクの大きさ・関与したい度合い・出口戦略の3つです。

空室が読みにくい立地や、竣工直後から収入を確保したい新築では、賃料固定型が適しています。

遠方に住んでいて日常の対応が難しいオーナーにも合う形です。

一方、稼働が安定した都市部の物件では、手数料の負担が有力な選択肢です。

自分で賃料を決めたい人や、短期で売却を考えている人には向きません。

また、マスターリース契約を結ばない選択肢についても、ほかの方法と同じように検討する価値があります。

つまり、判断を分けるのは好みではなく、想定空室率・料率・保有期間という数字の組み合わせです。

建築や管理受託を扱わない第三者に複数パターンの試算を依頼すると、同じ条件で比べられます。

まとめ|マスターリース契約とサブリース契約の要点

マスターリース契約はオーナーと不動産会社、サブリース契約は不動産会社と入居者の契約です。

判別の手がかりは、表題ではなく当事者欄と転貸条項です。

契約タイプは賃料固定型と実績連動型の2つで、空室リスクを負う側が入れ替わります。

ただし、賃貸住宅管理業法が守るのは契約前の情報提供までで、その後の賃料水準までは届きません。

契約期間と固定期間、解約条項、費用負担の4か所は、数字と期間で書き出して比べてください。

有利か不利かは物件と出口戦略で変わるため、複数パターンの試算で確かめる形が現実的です。 建築や管理受託を売らない立場から中立に比べたい場合は、土地活用コンサルティングへの相談も選択肢になります。

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