コラム
マンションを建てる費用|坪単価123万〜159万円の内訳

相続した土地や自宅の敷地に、賃貸マンションを建てられないかと考える土地オーナーは少なくありません。
最初に知りたいのは、総額でいくらかかるのかという一点です。
マンションを建てる費用は本体工事費だけでは足りず、付帯工事費と諸費用を含む総事業費で見る必要があります。
この記事では、公的統計にもとづく坪単価と費用の内訳、総事業費の試算手順をまとめます。
マンションを建てる費用の総額の目安
マンションを建てる費用は総事業費で見るのが基本で、一般的に3階建てで2億5,000万円前後、5階建てで4億円前後が目安です。 なお、ここで扱うのは賃貸マンションで、タワーマンションや分譲マンションの購入費とは前提が異なります。
構造・階数別の建築費の目安
本体工事費の水準は、構造と延べ床面積の掛け算でおおよそ決まります。 国土交通省の建築着工統計調査報告(令和7年計)から構造別の平均単価を計算すると、鉄骨造は1坪あたり約123万円になります。 また、同じ計算で鉄筋コンクリート造は約135万円、鉄骨鉄筋コンクリート造は約159万円です(出典:国土交通省「建築着工統計調査報告」)。
延べ床面積を階数ごとに置くと、本体工事費の目安は次のようになります。
階数(延べ床面積の前提) 鉄骨造(123万円/坪) 鉄筋コンクリート造(135万円/坪)
3階建て(150坪) 約1億8,500万円 約2億300万円
5階建て(240坪) 約2億9,500万円 約3億2,400万円
10階建て(480坪) 約5億9,000万円 約6億4,800万円
なお、表の金額は本体工事費だけで、敷地面積が変われば延べ床面積とともに総額も動きます。
Web上で紹介されている5階建ての目安額が1億円近く違うのは、坪単価の出所と前提がそろっていないためです。
総事業費に占める本体工事費の割合
見積書の本体工事費をそのまま資金計画に置くと、着工後に不足します。 総事業費は本体工事費のおおむね1.2倍から1.3倍を見込むと、実態から大きく外れません。 上乗せ率が1.05倍から1.3倍まで開くのは、本体工事費に含める範囲の線引きが会社ごとに違うためです。
そのため、比率そのものを比べるより、見積書の項目を突き合わせるほうが実態をつかめます。
マンション建築費の坪単価相場
坪単価は総額を左右する最大の変数で、賃貸マンションでは1坪あたり100万円台が中心です。 ただし、公的統計から出した単価と建築会社の実績単価では、同じ構造でも金額に差が出ます。
以下では、構造による坪単価の違いと、地域差を見ていきましょう。
構造別の坪単価
構造の選択肢は鉄骨造・鉄筋コンクリート造・鉄骨鉄筋コンクリート造の3つで、この順に単価が上がります。 鉄骨造はS造、鉄筋コンクリート造はRC造、鉄骨鉄筋コンクリート造はSRC造と略されます。 2025年に着工した建築物の平均単価は、S造が1坪123万円、RC造が135万円、SRC造が159万円でした。
中低層の賃貸マンションではS造かRC造が選ばれ、SRC造は超高層や分譲で採用されます。
なお、この単価は非居住用の建築物も含む全体平均で、賃貸住宅だけを取り出した数字ではありません。
地域別の坪単価
構造が決まっても、建てる場所が変われば単価は動きます。 前掲の1坪123万円から159万円は全国平均であり、東京都のような大都市部ではこれを上回り、地方では下回ると見ておいてください。 これは、建材費と人件費に地域差があるうえ、住宅が密集した市街地では重機の搬入経路や仮設スペースが限られます。 都市部で単価が上がるのはこの制約が積み上がるためで、地方との差は小さくありません。
そのため、自分の都道府県の水準は、同じ建築着工統計調査の都道府県別・構造別の集計で工事費予定額を床面積で割って確かめます。
市区町村まで絞った単価は、建築会社の見積もりで確かめるほうが確実です。
マンションを建てる費用の内訳
総事業費は、5階建てなら3億2,400万円・6,480万円・3,240万円という規模になります。 その内訳は以下の通り、本体工事費・付帯工事費・諸費用に分かれます。
本体工事費
総事業費のおよそ7割から8割を占めるのが本体工事費です。 基礎工事、柱や梁などの躯体、外装と内装の仕上げがここに含まれます。
見積書の本体工事費を延べ床面積で割り戻し、提示された坪単価と一致するかを確認してください。
付帯工事費(別途工事費)
本体工事費に含まれない工事が、総事業費の2割前後を占めます。 給排水やガス、電気の引き込み、外構、地盤改良、既存建物の解体、仮設工事がここに入ります。 目安は本体工事費の15%から25%ですが、土地の条件によって最も差が出る費目です。
見積もり前に前面道路の幅員と地盤調査の有無、既存建物の残置を洗い出すと、増額要因を先に把握できます。
諸費用
工事以外にかかる諸費用は、本体工事費のおおむね1割です。 設計料、地盤調査費、印紙税、登録免許税、不動産取得税、保険料、ローン手数料がここに並びます。 工事請負契約書の印紙税は、契約金額1億円超5億円以下で6万円、5億円超10億円以下で16万円になります。 これは、2027年3月31日までに作成される契約書に適用される軽減措置です(出典:国税庁「印紙税の軽減措置」)。
登録免許税は、建物の所有権保存登記が固定資産税評価額の0.4%、抵当権設定登記が債権金額の0.4%です。
保存登記を0.15%に下げる軽減は自己居住用に限られ、賃貸マンションでは使えません(出典:国税庁「登録免許税の税額表」)。
不動産取得税は住宅の税率が3%で、新築の共同住宅は1戸の床面積40㎡以上240㎡以下なら1戸1,200万円が控除されます。
控除は区画ごとに効くため、戸数が多いほど1戸あたりの負担は軽くなります(出典:東京都主税局「不動産取得税」)。
所有地での建築費の試算手順
ここまでの単価と比率を使えば、自分の土地の総事業費はつぎの3ステップで概算できます。
坪単価を掛けて本体工事費を求める
上限まで建てる前提で計算しても、本体工事費は1通りには決まりません。 延べ床面積240坪にRC造の坪単価135万円を掛けると、本体工事費は3億2,400万円です。
ただし、単価には幅があるので、120万円なら2億8,800万円、150万円なら3億6,000万円と上下も出しておくと安心です。
建ぺい率と容積率から延べ床面積の上限を求める
延べ床面積の上限を決めるのは階数ではなく容積率です。 建ぺい率は1階の建築面積の上限を、容積率は延べ床面積の上限を、敷地面積に対する割合で示します。 例えば、敷地80坪で建ぺい率80%・容積率300%なら、建築面積の上限は64坪、延べ床面積の上限は240坪になります。
5階建てなら1フロアは48坪、6階建てなら40坪となり、総床面積は240坪のまま変わりません。
階数を積んでも賃貸できる面積が増えないなら、階段やエレベーターの分だけ工事費が膨らみます。
付帯工事費と諸費用を加えて総事業費を求める
本体工事費が出たら、上乗せ率を2通り置いて総事業費に直します。 付帯15%・諸費用10%の低めなら本体の1.25倍、付帯25%・諸費用10%の高めなら1.35倍です。 本体3億2,400万円なら、総事業費は4億500万円から4億3,700万円の範囲に収まります。
この幅を自己資金と借入で吸収できるかどうかが、着工を判断する最初の分岐点です。
規模を変えた複数プランの収益シミュレーションを並べると、どの案が資金計画に収まるかを比べられます。
建築費を左右する土地と建物の条件
同じ延べ床面積でも、法規制・敷地条件・仕様の3つで工事費は動きます。 このうち法規制と敷地条件は土地を持った時点で決まるため、削れる範囲は仕様に限られます。
以下で具体的に見ていきましょう。
階数と高さに関わる法規制
階数を1つ積むだけで要件が変わる境目が、高さ31mと6階です。 建築基準法第34条第2項は、高さ31mを超える建築物に非常用の昇降機を求めています(出典:e-Gov法令検索「建築基準法」)。 これは、災害時にはしご車が届かない部分への進入路を確保する規定で、居住者用エレベーターの設置とは別の話です。
また、6階以上の階に居室を設けるときは、直通階段を2つ以上とする規定があります(出典:e-Gov法令検索「建築基準法施行令」)。
ただし、居室の床面積の合計が100㎡以下(主要構造部が準耐火構造または不燃材料の場合は200㎡以下)なら、避難上有効なバルコニーなどを条件に緩和されます。
敷地の形状と立地
同じ面積の土地でも、形と接道条件で坪単価は変わります。 狭小地や不整形地では資材置き場と足場の余地が減るため、施工の手間が増えがちです。
また、地盤が弱ければ地盤改良や杭打ちが加わるので、ボーリング調査の結果は早めに押さえてください。
間取りと設備のグレード
ワンルーム中心にすると戸数が増え、坪単価はむしろ上がります。 これは、戸数の分だけ玄関、水回り、給湯器、間仕切り壁が増えるためです。 ただし、専有面積あたりの家賃も単身向けのほうが高く取れるため、坪単価の高さがそのまま不利になるとは限りません。
マンション建築費が高騰している背景
2025年に着工した建築物の平均単価は、1㎡あたり約32万円で前年より1割上がりました。 建築着工統計調査報告(令和7年計)では、着工床面積が6.7%減ったのに工事費予定額は4.2%増えています。 面積が縮んで金額が伸びた分だけ、単価が押し上げられた計算です(出典:国土交通省「建築着工統計調査報告」)。
押し上げているのは、輸入資材の価格と輸送コスト、そして建設現場の人件費です。
2024年4月から建設業にも時間外労働の上限規制が適用され、人員確保の費用も上がりました。
高い水準で推移している時期には、すぐに着工する案だけでなく、建築時期を見直す案や、土地を保有し続ける案も含めて比較します。
マンションを建てる費用を抑える方法
総事業費を1割下げられれば、5階建てなら4,000万円規模の圧縮になります。 ここで紹介する手段は、発注方法・設計・仕様の見直しに分かれ、入居付けと修繕に響く削り方は避けます。
複数社から相見積もりを取る
削減の余地は、同じ条件で2社以上に見積もりを出してもらった時点で見えてきます。 1社だけでは提示額が相場のどこにあるか判断できず、減額交渉の材料も持てません。 なお、比べるときは総額ではなく、坪単価の定義と本体工事費に含まれる範囲をそろえます。 A社が本体に入れている給排水引き込みをB社が付帯に回している場合、坪単価だけの比較では判断を誤ります。
VE提案で仕様を見直す
値引き交渉と混同されがちなのがVE提案です。 VEはバリューエンジニアリングの略で、求める性能を保ったまま建材や設備を組み替えて費用を下げる手法です。
ただし、依頼する側が守る性能と譲れる部分を先に決めておかないと、性能だけが落ちた案が返ってきます。
設計と施工を1社にまとめる方式なら、設計事務所へ別途支払う設計料を圧縮できます。
共用部と設備の仕様を最適化する
削る順番は、専有部より先に共用部からです。 専有面積を狭めると住み心地が落ち、家賃も下げざるをえません。 一方、共用廊下やエントランスは最低限の広さでも不満につながりにくく、絞った面積がそのまま工事費に効きます。
住宅設備は戸数の分だけ要るため、グレードを1段下げた差が戸数倍で効いてくる費目です。
ただし、外壁のように張り替え費用が大きい部位は、初期費用をかけて長持ちさせるほうが総支出は下がります。
エレベーターと廊下の方式を検討する
エレベーターの有無は、初期費用とランニングコスト、そして入居付けの3点に影響します。 設置には昇降路の床面積が要り、保守点検と電気代が毎月かかり続けます。
4階建てや5階建てで立地が良ければ、設けない判断で収益性を優先する選択肢も残ります。
ただし、高齢の入居者やファミリー層を狙うなら、設けない判断は空室に直結しかねません。
また、内廊下を外廊下に替える方式変更も、面積と防火仕様の両面で工事費を下げます。
建築費を回収できるかを判断する視点
総事業費が読めたら、次は家賃収入で回収できるかを確認します。 主なポイントは以下の通りです。
表面利回りと実質利回りの試算
同じ物件でも、提示される利回りは2種類あって数字が大きく違います。 表面利回りは年間家賃収入を総事業費で割った値、実質利回りは家賃収入から諸経費を引いてから割った値です。 総事業費4億500万円のRC造5階建てで、20戸を月11万円で貸せば年間家賃は2,640万円になります。
表面利回りは6.5%ですが、管理費や修繕費、税金を家賃の25%と置くと実質利回りは4.9%まで下がります。
そのため、示された利回りがどちらの数字なのかを、先に確かめてください。
空室・家賃下落・修繕の3大リスク
満室想定の収支計画は、3つの要因で崩れます。 空室と経年による家賃下落、そして10年から15年ごとに訪れる大規模修繕が要因になります。 試算では空室率を1割前後、家賃下落を10年で1割程度見込んでおくと、計画が現実から離れません。
また、運用段階で生じる土地活用の疑問は、着工前に洗い出しておきます。
まとめ|総事業費と回収計画の考え方
マンションを建てる費用は、本体工事費の1.2倍から1.3倍の総事業費で見積もります。 坪単価は構造で123万円から159万円まで開きます。 また、延べ床面積の上限は容積率で決まるため、階数を積んでも賃貸面積は増えません。
見積もりを比べるときは、坪単価の定義と本体工事費の範囲をそろえてから金額を並べてください。
総事業費が読めた段階で、家賃収入で回収できるかを実質利回りで確かめます。
建築会社の提案は自社の受注を前提に組まれており、第三者の目で複数案を並べる意味は小さくありません。
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