コラム
賃貸経営の始め方とは?初心者が判断する順番と必要資金も解説

賃貸経営に関心はあっても、最初に何を決めればよいのかが分からないという声は少なくありません。
土地を相続した方も、これから土地を買う方も、判断の順番は変わりません。
本記事では、全体像、5ステップ、資金と税金、数字の見方、失敗の型、相談先の順に整理します。
読み終えたときに、ご自身の条件で事業が成立するかを自分で確かめられる状態を目指します。
賃貸経営の全体像
賃貸経営とは、所有する住宅を入居者に貸し、その対価として家賃を受け取る事業です。
最初に押さえる論点は、得られるもの、お金の流れ、業務の担い手、土地の条件の4つです。
賃貸経営で得られるもの
得られるものは、家賃という継続収入、相続税評価額の引き下げ、土地を手放さずに活用できる点の3つです。
相続税では賃貸住宅を建てた土地が貸家建付地として評価され、更地より評価額が下がります(出典:国税庁「No.4614 貸家建付地の評価」)。
一方で、元本は保証されず、すぐに現金化できず、家賃の全額が手取りになるわけでもありません。
家賃収入が手元に残るまでの流れ
管理委託費、ローン返済、税金、修繕費が順に差し引かれ、残った分が手取りになります。
管理委託費は家賃の5%程度、修繕費は年間家賃収入の5〜10%程度が目安とされます(2026年8月時点)。
ここにローン返済と税金が重なり、手取りが家賃総額の2割前後にとどまる場合もあるのです。
オーナーが担う業務と管理会社に任せられる業務
賃貸経営の業務は、入居者募集、契約、家賃集金、クレーム対応、修繕手配、退去立会いと多岐にわたります。
これらを自分で行うのが自主管理、管理会社へ任せるのが管理委託です。
ただし、家賃設定、修繕の実施可否、入居条件といった意思決定は、最後までオーナーが行います。
任せられるのは実務であり判断ではないという線引きが、失敗の分かれ目になります。
賃貸経営に向いている土地の条件
賃貸需要が見込める土地には、駅からの距離、周辺施設、面積という共通条件があります。
駅から徒歩10分前後、スーパーや銀行が近い、通勤通学で30〜40分圏内が一つの目安です。
面積では60坪前後あれば、複数戸の建物を計画できる余地が生まれます。
条件を満たさない土地なら、建てずに売る、別の用途で活かす判断も等しく選択肢に入ります。
初心者が賃貸経営を始めるまでの5つのステップ
賃貸経営を始めるまでの流れは、目的の整理から入居者募集までの5段階に分けられます。
各段階には決めることと、そこで見送る判断の両方があります。
ステップ1 目的と撤退ラインの明確化
最初に決めるのは、何のために賃貸経営を行うのかという目的です。
相続税対策か老後の収入かによって、選ぶべき規模も構造も変わります。
また、何年で回収できなければ見直すのか、稼働率が何%を下回れば手放すのかという撤退ラインも決めておきましょう。
建築を前提にせず、やらないという結論も含めて比較する土地活用の相談業務を使う方法もあります。
ステップ2 賃貸需要とターゲット層の調査
つぎに行うのは、その土地で誰がいくらで借りるのかを自分の目で確かめる調査です。
見るのは、周辺の人口動態、募集中の物件の家賃、空室の多さ、募集期間です。
調べた結果から入居者層を定め、間取りと戸数の方向性を決めます。
この調査は、業者の提案が自分の土地に合っているかを検証するために行います。
ステップ3 収支シミュレーションの作成
調査結果がそろったら、家賃収入、空室率、経費、ローン返済を入れた長期の収支表を作ります。
作成は建築会社や管理会社に依頼できますが、前提条件は自分で指定してください。
また、想定家賃、稼働率、金利、修繕費の4つは、控えめな数字でも試算しておきます。
家賃、空室率、金利を振った複数パターンを並べると、どこまで悪化に耐えられるかが見えます。
ステップ4 資金計画とアパートローンの検討
資金計画では、自宅を買う住宅ローンではなく、アパートローンなどの事業用ローンを使います。
審査では本人の年収や勤務先だけでなく、物件の収益性や立地も見られます。
ここで区別したいのは、借りられる額と無理なく返せる額が別だという点です。
金利が1%上がったときに返済額がいくら増えるかを試算してから、借入額を決めてください。
ステップ5 管理方式の決定と入居者募集の開始
建物と資金の見通しが立ったら、自主管理、管理委託、サブリースのどれで運営するかを決めます。
管理会社を比べるときは、業務範囲、手数料の対象、募集方法、解約条件の4点を確認します。
また、サブリースでは契約前の重要事項説明が義務づけられ、誇大広告等や不当な勧誘も禁じられています(出典:国土交通省「賃貸住宅管理業法ポータルサイト」)。
初心者に必要な自己資金・初期費用と税金の目安
賃貸経営にかかるお金は、自己資金、建築費や購入費、諸費用、保有中の税金の4つに分かれます。
着手時に一度かかるお金と、保有中に毎年かかるお金は分けて考えてください。
金額は幅があり、自己資金だけでも500万〜1,500万円と前提条件で動きます。
自己資金の目安
自己資金の目安として、複数の大手事業者が物件価格の1〜3割という水準を示しています。
5,000万円の物件なら500万〜1,500万円、8,000万円なら800万〜2,400万円が一つの基準です。
特に、自己資金を厚くするほど借入と返済が減り、空室が出ても耐えられる期間が伸びます。
土地を相続で持つ方は建築費だけが対象になり、土地から買う方より必要額は小さくなります。
建築費・購入費の相場
初期費用の大半を占める建築費は、木造、鉄骨造、鉄筋コンクリート造の順に高くなります。
木造アパートは坪75万〜100万円程度が目安とされます(2026年8月時点)。
住宅用の法定耐用年数は、木造が22年、鉄筋コンクリート造が47年です(出典:国税庁「主な減価償却資産の耐用年数表」)。
一方、鉄骨造は骨格材の肉厚により19年から34年に分かれます。
特に、耐用年数が短い構造は融資期間も短くなる場合が多く、毎月の返済は重くなります。
建築費以外にかかる諸費用
建築費のほかに、税金や手数料といった諸費用が発生します。
内訳は不動産取得税、登録免許税、印紙税、ローン事務手数料、火災保険料などです。
また、不動産取得税の標準税率は4%ですが、令和9年(2027年)3月31日までに取得した土地と住宅は特例で3%に軽減されています(出典:総務省「不動産取得税」)。
諸費用の合計は物件価格の7〜10%程度が目安とされ、5,000万円の物件なら350万〜500万円です(2026年8月時点)。
なお、これらは原則として現金で用意してください。
保有中の税金と確定申告
固定資産税は評価額に標準税率1.4%を掛けて計算します(出典:総務省「固定資産税の概要」)。
市街化区域であれば、制限税率0.3%を上限とする都市計画税も加わります(出典:総務省「都市計画税」)。
さらに、住宅用地の特例により、200平方メートル以下の部分は課税標準が6分の1に軽減されるのです。
また、家賃収入から経費を引いた不動産所得は、毎年の確定申告の対象です。
青色申告特別控除は、事業的規模と複式簿記・期限内申告の要件を満たせば55万円になります(出典:国税庁「No.2072 青色申告特別控除」)。
65万円にするには、さらにe-Taxによる電子申告などが必要になり、税率や要件も自治体差と改正があるため、個別の判断は税理士に確認してください。
初心者が判断を誤らないための数字の見方
提示された利回りや収支表は、どの前提で作られたかを確かめてから読みます。
まず、表面利回りと実質利回りの違い、利益と現金のずれ、収支表に織り込むリスクの3点を押さえましょう。
表面利回りと実質利回りの違い
広告や提案書に載る利回りの多くは、経費を差し引く前の表面利回りです。
表面利回りは年間家賃収入を物件価格で割り、実質利回りは経費を引いた収入を総額で割って求めます。
年間家賃収入768万円で総事業費8,000万円なら表面利回りは9.6%、経費が年150万円なら実質利回りは7.7%です。
もし、土地をすでに持っている場合は、建築費が分母になり、土地から買う方は土地代と建築費の合計になります。
利益とキャッシュフローのずれ
帳簿の利益が黒字でも、手元の現金が不足する状態は起こります。
ずれを生む要因は、ローン返済の元金部分と減価償却費の2つです。
元金の返済は経費にならないため、現金は出ていくのに利益は減りません。
逆に、減価償却費は経費になりますが、その年に現金が出ていくわけではないため、収支表を見るときは、利益の行だけでなく手元に残る現金の行を必ず確認してください。
収支計画に織り込むリスク
満室を前提に作られた収支表は、リスクを織り込んだ数字に置き換えてから判断します。
織り込む項目は、空室、家賃下落、金利上昇、修繕、家賃滞納、災害の6つです。
空室は稼働率、家賃下落は想定家賃、金利上昇は返済額、修繕は修繕引当、家賃滞納は滞納損失、災害は保険料の行に反映します。
このうち修繕費は年間家賃収入の5〜10%程度を見込み、10〜15年ごとの外壁工事も想定します。
6行のどれかが空欄であれば、その提案は満室が続く前提で作られたと考えてください。
初心者がつまずきやすい4つの失敗パターン
初心者の失敗は、資金、間取り、前提条件、管理という4つの型に整理できます。
自分の計画のどこを点検すべきかを、ステップ1〜5と対応づけて確認してください。
自己資金が不足したまま借入を増やす
資金が足りないまま借入を増やすと、わずかな空室で返済が滞ります。
返済額が家賃収入に占める割合が高いほど、収入が減ったときの余裕は小さくなります。
そのため、満室時の家賃収入に対して返済額が何割になるかを、着手前に計算してください。
自己資金を増やせない場合は、規模を下げる、時期をずらす選択肢もあります。
収益性だけで間取りと戸数を決める
同じ敷地なら、1戸を狭くして戸数を増やすほど計算上の収益は高く出ます。
しかし、周辺の需要と合わない間取りであれば、建てても入居者は決まりません。
また、単身者が少ない住宅地にワンルームを並べれば、想定家賃も稼働率も届かないでしょう。
提案書の想定家賃が、周辺で募集されている家賃と一致しているかを確かめます。
甘い条件のシミュレーションを鵜呑みにする
収支表は前提の置き方ひとつで結果が変わるため、数字より前提を先に読みます。
稼働率100%、家賃下落なし、金利固定という前提であれば、どの計画も黒字に見えるはずです。
複数社に同じ条件を指定して収支表を作らせると、前提の差が数字に現れます。
自分で判断できない部分は、建築や仲介で収益を得ない第三者に検証を頼む方法もあります。
管理会社に任せきりで空室が長期化する
委託したあとも、募集状況と家賃設定の妥当性はオーナーが確認します。
報告を受け取るだけで内容を見ない状態が続くと、空室の原因が分からないまま時間が過ぎます。
なお、確認するのは、問い合わせ件数、内見件数、成約に至らない理由、周辺の募集家賃です。
初心者が最初に相談する相手の選び方
相談先は立場によって収益の出どころが違うため、提案の重心も変わります。
立場の違いを知ったうえで、複数の提案を同じ物差しで比べます。
相談先ごとの立場と提案の傾向
相談先には、ハウスメーカー、不動産会社、管理会社、金融機関、税理士、独立系コンサルタントがあります。
収益の出どころは、建築、仲介、管理、融資、申告、助言とそれぞれ別です。
建築で収益を得る立場なら建てる提案が中心になり、管理で収益を得る立場なら運営の提案になります。
建築商品を持たない土地活用コンサルティング会社のように、建てない選択肢も含めて比べるのも選択肢の一つです。
複数の提案を比較するときの確認項目
各社の提案を比べるときは、条件を揃えてから並べます。
揃えるのは、前提条件、自己資金、返済計画、空室率、修繕計画、契約条件の6項目です。
また、想定家賃と稼働率が各社バラバラでは、収支の差が実力差か前提差か分かりません。
どの提案もステップ1で決めた基準を満たすことが必要です。
まとめ:着手の前に判断の順番を持つ
賃貸経営の始め方は、目的と撤退ラインを決め、需要を調べ、収支を試算し、資金を組み、管理方式を選ぶ順に進みます。
必要な自己資金は物件価格の1〜3割が目安とされ、保有中は固定資産税と確定申告が毎年続きます。
特に、数字を読むときは、利回りの種類、利益と現金のずれ、6つのリスクの反映先を確かめてください。
ただし、提案を受ける側が独力で前提を検証するには限界もあります。
株式会社土地活用コンサルティングは、建築ありきではなく、やらないという選択肢も含めて数字で比較できる資料を示しています。 ご自身の土地で事業が成立するかを確かめたい方は、事業性の検証と収支シミュレーションの相談をご利用ください。

