コラム
入居率を上げる方法とは?3つの計算方法も紹介

退去した部屋が埋まらず、管理会社から届く数字にも不安を感じている方は少なくありません。
入居率には測り方が3つあり、どれを使うかで同じ物件でも結果が変わります。
この記事では、自分の数字を出す手順から、費用をかけない対策と費用をかける判断までを整理します。
入居率の3つの計算方法
入居率は、貸せる部屋のうちどれだけが埋まっているかを示す割合です。
測り方には時点・稼働・賃料の3つがあり、それぞれ答えている問いが違います。
また、広告に載るのは時点入居率で、実績を振り返るなら残る2つが向いています。
時点入居率
時点入居率は、ある一日を切り取り、その日に埋まっていた部屋の割合を出す測り方です。
10戸のうち2戸が空いていれば、その日の入居率は80%になります。
なお、使うのは総戸数と空室戸数だけで、広告や物件資料でよく見かける数字です。
切り取る時点を繁忙期の直後に置けば、同じ物件でも高く見せられます。
稼働入居率
稼働入居率は、1年のうちどれだけの期間、部屋が稼働していたかを見る測り方です。
10戸なら365日に10戸を掛けた3,650戸日が、満室のときの分母になります。
もし、1部屋が2か月空けば空室は約61戸日で、稼働入居率は98%前後です。
同じ空室でも時点入居率は90%で、期間で均す稼働入居率のほうが高く出ます。
賃料入居率
賃料入居率は、満室を想定した賃料総額に対し、実際にいくら入ったかを見る測り方です。
戸数では埋まっていても、値下げして埋めた分だけこの数字は下がります。
募集条件を緩めた前後で並べれば、埋まったのか安く貸しただけなのかが分かります。
入居率の全国平均と目安の水準
全国平均として出回る数値は、調査ごとに対象も時点も違います。
以下で、入居率の全国平均と目安の水準を見ていきましょう。
業界団体・公的統計から見た全国平均
業界団体の調査では、委託管理物件の全国平均入居率は94.2%でした(出典:日本賃貸住宅管理協会「日管協短観」)。
同じ調査でサブリース物件は97.0%で、契約の形が違えば水準も変わります。
この数値は2023年度を対象に699社が回答したもので、第29回は準備中のため2026年8月時点の最新にあたります。
公的統計では、賃貸用の空き家が443万6千戸、居住世帯のある借家が1,946万2千戸でした(出典:総務省統計局「令和5年住宅・土地統計調査」)。
2つを足した分母で計算すると18.6%が空いており、入居率に直せば81.4%です。
委託管理された物件を見るか、賃貸住宅ストック全体を見るかで、13ポイント近い差が生まれます。
自分の物件で目標にすべき入居率
全国平均をそのまま目標に置くと、戸数の少ない物件は最初から届きません。
10戸のアパートは1戸空いた時点で90%となり、どの調査の平均も下回ります。
特に、戸数が少ないほど1戸の重みが大きく、率だけで管理すると判断を誤りがちです。
20戸に満たない物件なら、前年の空室日数を何日縮めるかという形に目標を置き換えます。
管理会社が公表する入居率をそのまま比較できない理由
管理会社が掲げる入居率98%という数字は、会社をまたいで並べても比較になりません。
計算方法と集計する物件の範囲が、会社ごとに違うためです。
見るべきは高さではなく、その数字がどこから出ているかという中身です。
計算方法が会社ごとに異なる
時点・稼働・賃料のどれを使うかで、入居状況が同じでも公表値は2ポイント前後動きます。
なお、切り取る時点を選べば、さらに高い数値も作れます。
もし、比べたい場合は、同じ計算式・同じ期間・同じ物件範囲で出し直してもらうほかありません。
2ポイント程度の差は計算方法の違いで説明がつくため、そこに時間をかける意味は薄いといえます。
集計する物件の範囲が会社ごとに異なる
募集を止めた部屋や新築の未募集住戸を分母から外せば、残るのは高い数値です。
サブリースには、勧誘時の不当な行為の禁止と契約前の重要事項説明が定められています(出典:国土交通省「サブリース事業の適正化のための措置」)。
特に、確かめたいのは、どの地域の築何年の物件を何戸集めた数字かという母集団です。
都心の築浅を集めた98%は、郊外に築古を持つオーナーの判断材料にはなりません。
入居率が下がる原因
対策を選ぶ前に、自分の物件で何が起きているかを特定します。
分岐点は内見数で、内見が入らないなら募集側、決まらないなら物件側の問題です。
賃料と初期費用が周辺相場と合っていない
新築時の賃料を据え置いたまま、周辺の募集条件から離れている物件は少なくありません。
民営借家の1か月あたり家賃は、木造で54,409円、非木造で68,548円でした(出典:総務省統計局「令和5年住宅・土地統計調査」)。
入居希望者が見ているのは月額ではなく、敷金・礼金・保証料・仲介手数料を足した総額です。
また、月額を1,000円下げるより、礼金1か月分をなくすほうが総額では大きく効きます。
設備と内装が入居者のニーズと合っていない
内見は入るのに決まらないなら、部屋の中身が競合に負けています。
思いつきでペット可や防音にしても、周辺に需要がなければ支出だけが残ります。
先に見るのは、周辺物件の設備、仲介会社がつかんだ断られた理由、歩いて見た街の様子の3点です。
募集情報が入居希望者に届いていない
内見が入っていない場合は、原因は部屋ではなく募集情報の側にあります。
写真が暗い、間取り図しかない、掲載先が1サイトだけ、という状態では土俵に乗りません。
また、内見数を毎月受け取っていれば、募集側と物件側のどちらに手を入れるかを自分で決められます。
立地と築年数は短期では変えられない
駅からの距離、周辺の人口、築年数は、賃料や設備をいじっても動きません。
変えられない条件を先に固定すれば、変えられる条件にいくらまでかけるかを決められます。
費用をかけずに入居率を上げる方法
空室が1戸あると、月の賃料が丸ごと入ってきません。
以下で、費用をかけずに入居率を上げる方法を見ていきましょう。
募集写真と物件情報を作り直す
入居希望者がポータルサイトの一覧で1件にかける時間は、数秒です。
もし、写真が数枚しかなければ、その段階で候補から外れます。
日中に照明を点けて全室を撮り直し、収納の中と共用部と駅までの道も入れます。
撮り直しに費用はほぼかからないうえ、内見数の前後比較で効き目も見える対策です。
募集条件を緩和する
条件の緩和は、月額賃料ではなく初期費用から手をつけます。
礼金1か月分をなくせば、賃料68,548円の部屋なら負担が同額だけ軽くなります。
賃料そのものを下げれば戸数ベースの入居率は上がる一方で、賃料入居率は下がる関係です。
また、経年変化や通常の使用による損耗の修繕費は賃料に含まれ、貸主が負担する扱いです(出典:国土交通省「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」)。
共用部を清掃する
内見に来た人が最初に見るのは、部屋ではなくエントランスとゴミ置き場と駐輪場です。
頻度は週1回を目安に、内見の前はゴミ置き場と郵便受けを確かめます。
清掃は最も支出が小さく、実施の前後で内見1件あたりの申込数を比べやすい対策です。
仲介会社に物件を紹介してもらう
入居希望者に部屋を最初に見せるのは、仲介会社の営業担当です。
営業担当が動きやすいのは、図面が新しく、鍵の受け渡しと連絡がすぐつく物件です。
広告料を出す方法もありますが、水準は地域差が大きく、複数社への確認が先になります。
退去を減らして空室の発生自体を抑える
空室が出なければ、募集そのものが要りません。
更新の時期に設備の不具合や要望を聞き取り、小さな修繕を先に済ませておきます。
また、賃貸住宅管理業者には、苦情の発生状況と対応状況を年1回以上報告することが求められます(出典:国土交通省「賃貸住宅管理業法ポータルサイト」)。
そこに上がった苦情は、つぎの退去を止める材料です。
費用をかけて入居率を上げる方法
支出ゼロの対策で内見数も申込数も動かないなら、物件そのものに手を入れます。
以下で、費用をかけて入居率を上げる方法を見ていきましょう。
入居者に人気の設備を導入する
設備には、あると選ばれるものと、なければ検索の段階で外れるものがあります。
無料のインターネット回線は後者に近く、条件を絞り込む項目として使われています。
また、集合住宅用の宅配ボックスは、メーカーの希望小売価格で30,100円からです(出典:パナソニック「集合住宅用宅配ボックス コンボ-メゾン」)。
検索で外れる設備から先に入れると、同じ支出でも内見数への効果が変わります。
水回りと内装をリフォームする
工事は原状回復・リフォーム・リノベーションの3段階に分かれます。
原状回復とは、入居者の故意や過失で生じた損耗を元に戻すことを指します(出典:国土交通省「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」)。
経年変化による色あせや設備の寿命は貸主側の負担で、貸せる状態に戻すための支出です。
入居率を上げるための投資は、その先にある設備の入れ替えや間取りの変更にあたります。
費用の回収年数から投資額を決める
判断の物差しは、投じる額を年間の増加分で割った回収年数です。
賃料68,548円の部屋が年に2か月空いていたなら、失う賃料は年137,096円になります。
40万円の工事で空室が年1か月に縮むなら、増える賃料は年68,548円で回収まで6年近くです。
複数の案を並べたいときは、建築や管理の受注を持たない事業者の土地活用コンサルティング業務のような相談先も使えます。
管理会社の見直しで入居率を上げる方法
自分でできる対策を尽くしても数字が動かないなら、入居付けを担う相手を見直します。
切り替えには解約の予告と引き継ぎが伴うため、決めてから動くまでに時間がかかります。
管理会社を比較する基準
公表入居率そのものは、比較の軸に使えません。
代わりに求めるのは、自分の物件と同じ地域・同じ築年数帯・同じ戸数帯の管理実績です。
管理戸数200戸以上の事業者は、国土交通大臣への登録を受けることになっています(出典:国土交通省「賃貸住宅管理業法ポータルサイト」)。
なお、この報告の頻度は、年1回以上が下限です。
国のひな形では、家賃の受領を毎月、維持管理を四半期ごとに報告する例が示されています(出典:国土交通省「賃貸住宅標準管理受託契約書」)。
契約前の説明で何を確かめるかは、土地活用のよくある質問のページにもまとまっています。
管理会社を変更する手順
最初に開くのは、現在の管理委託契約書です。
国のひな形では、解約の申入れを文書で行うと定めています(出典:国土交通省「賃貸住宅標準管理受託契約書」)。
ただし、予告期間そのものは空欄で、何か月前かは契約ごとに違う扱いです。
段取りは、契約書の確認、変更理由の整理、複数社の比較、解約の通知、引き継ぎ、通知と進みます。
注意したいのは、敷金と入居者情報で、契約終了時に書類と預り金を引き渡す決まりです。
対策を続けても入居率が上がらない場合の選択肢
募集も条件も設備も管理会社も見直して数字が変わらないなら、賃貸のまま持つこと自体を見直します。
物差しは前章と同じで、回収年数と残りの保有期間の比較です。
建て替えは賃料水準を引き上げられる一方、解体と建築に数千万円と1年以上かかります。
一方で、用途転換は、駐車場やトランクルームなど建物を使わない使い道に切り替える方法で、収益は小さくなります。
売却は維持費と将来の管理責任を一度に手放せる方法で、そこで収入も終わる選択です。
築古アパートの空室を建て替えで解消し、相続対策まで含めて組み直した事例も公開済みです。
建築会社にも不動産会社にも属さない土地活用コンサルティングなら、複数の案を同じ条件で並べられます。
まとめ|入居率を上げるための手順
入居率を上げる作業は、測る、比べる、切り分ける、手を打つ、という順番で進みます。
最初に出すのは、時点・稼働・賃料の3つで測った自分の数字です。
つぎに、業界団体の94.2%や公的統計から計算した81.4%と照らし、比較の相手を確かめます。
そのうえで、原因の特定に使うのは内見数で、着手するのは支出の残らない対策からです。
数値は調査主体と時点を確かめて使い、効き方が地域や築年数で変わる前提で判断しましょう。株式会社土地活用コンサルティングは、ハウスメーカーや不動産会社に属さない第三者の立場で、賃貸経営から売却まで含めて比較しますので、お気軽にご相談ください。

