コラム

公開日 2026.08.26 更新日 2026.09.24

空き家の使い道を3方向で整理|活用・解体・売却の選び方

相続や親の施設入居で空き家を持つことになり、売る・貸す・壊すのどれを選ぶか決めきれない方は少なくありません。

この記事では空き家の使い道を「建物を残す」「解体して土地を使う」「所有を手放す」の3方向に整理します。

そのうえで、需要・初期投資と回収期間・ランニングコスト・出口の4基準で候補を絞る手順をお伝えします。

目次

空き家を放置し続けるデメリット

空き家を放置すると、固定資産税と管理費で毎年おおむね13万〜32万円が出ていき、行政の指定を受ければ税負担はさらに増えます。

総務省統計局の調査では全国の空き家は900万2千戸、空き家率は13.8%でした(出典:総務省統計局「令和5年住宅・土地統計調査」)。

放置を1年続けた場合の支出は、次の費目に分けられます。

放置1年あたりの費目年額の目安(木造戸建て)
固定資産税・都市計画税5万〜15万円
火災保険料(一般物件扱い)1万〜3万円
電気・水道の基本料金1万〜2万円
管理委託費(月1回の訪問)6万〜12万円

なお、金額は立地と規模で変わりますが、使い道を決めない期間が続くほどこの支出がそのまま積み上がります(2026年8月時点)。

固定資産税と管理費の負担

毎年必ず出る固定費は、土地と建物の固定資産税、火災保険料、電気と水道の基本料金、遠方なら管理委託費です。

これに対して、一時費用は、草木の伐採や粗大ごみの処分、雨漏りの補修のように数年に一度だけ出ていきます。

固定費の中心である税額は納税通知書の課税標準額から概算できるため、まず手元の通知書をご確認ください。

管理不全空家・特定空家に指定された場合の固定資産税

住宅が建つ土地は住宅用地特例で課税標準が下がりますが、勧告を受けるとこの特例から外れます。

特例の内容は200平方メートル以下の部分で価格の6分の1、超える部分で3分の1です(出典:総務省「固定資産税の概要」)。

令和5年の改正空家等対策特別措置法で管理不全空家が新設され、助言・指導のあと勧告に進んだ時点で特例が外れます(出典:国土交通省「空家法の改正について」)。

倒壊・火災・不法侵入による損害賠償のリスク

建物が劣化すると瓦の落下や倒壊、放火や不法侵入が起こりやすく、他人に損害を与えれば所有者の賠償責任が問われます。

見落とされやすいのは火災保険で、人が住まない建物は一般物件として扱われ、保険料や引受条件が変わります。

建物を残したまま使う空き家の使い道

建物を残したまま使う空き家の使い道は、自分で住む・住宅として貸す・住宅以外の用途で貸すの3系統です。

分類の軸は建物を残すかどうかと所有を手放すかどうかの2つで、活用方法や活用アイデアを並べた記事とは絞り方が異なります。

自分や家族が住む

所有者や子世代が住む使い道では、賃貸収入は生まれませんが住宅用地特例を維持できます。

昭和56年5月以前に建てられた住宅なら、耐震改修が必要かどうかが最初の判断材料です。

戸建て賃貸として貸す

現況のまま、または最低限の修繕で住宅として貸す方法で、ファミリー層の需要が見込めます。

判断の目安になるのは、リフォーム費÷(月額賃料×12-年間経費)で概算できる回収年数です。

仮に、改修費300万円・月額賃料7万円・年間経費20万円なら、300÷64で約4.7年という計算です。

DIY型賃貸として貸す

DIY型賃貸は、借主が自費で改修する代わりに賃料を抑えて貸す方法で、改修費を出せない空き家でも賃貸に回せます。

国が契約書式例とガイドブックを公開しています(出典:国土交通省「DIY型賃貸借の契約書式例」)。

シェアハウスとして貸す

これは、部屋数の多い戸建てを個室単位で貸す方法で、1棟貸しより総賃料を高くできる場合があります。

一定の規模を超えると建築基準法上は寄宿舎として扱われるため、着手前に自治体の建築部局へご相談ください。

民泊・宿泊施設として貸す

観光需要のある立地では、届出で始める住宅宿泊事業か、許可を取る旅館業の簡易宿所かが最初の分岐です。

住宅宿泊事業は届出制で、宿泊させられる日数は年間180日以内です(出典:国土交通省「民泊制度ポータルサイト」)。

和歌山県湯浅町の古民家を再生した宿泊施設「千山庵」のように、地方でも運営されている場合があります。

店舗・シェアオフィスとして貸す

住宅を店舗や事務所に用途変更して貸す方法では、改修費とは別に設計や申請の費用がかかります。

床面積200平方メートルを超える特殊建築物への用途変更では確認申請が必要です(出典:e-Gov法令検索「建築基準法」)。

また、徳島県神山町では空き家を改修したサテライトオフィスの誘致が進み、事業者向けの需要が生まれています。

トランクルーム・貸倉庫として貸す

これは、建物をそのまま収納スペースとして貸す方法で、内装の水準を上げずに済みます。

初期費用を抑えやすい一方で賃料の単価は低く、集合住宅が多い地域に向いた使い道です。

介護・福祉事業者に貸す

これは、デイサービス等の事業者に建物ごと貸す方法で、契約期間が長く空室のリスクは下がります。

ただし、撤退された場合、同じ設備を使える次の借り手は限られる点に注意が必要です。

自治体に貸す

自治体の空き家バンクや住宅セーフティネット制度の登録住宅として貸すと、賃料は低めでも改修費の補助や募集支援を受けられます。

栃木県栃木市の空き家バンクでは成約が200件を超えるなど、地域によって成果には差が出ています。

建物を解体して土地を使う空き家の使い道

修繕費を賃料で回収できない場合は、建物を解体して土地として使う方向を検討します。

ただし、解体すると住宅用地特例が外れるため、解体費と上がる税額と土地から得られる収入の3つを並べて比べましょう。

解体費は木造30坪で100万〜200万円程度が目安で、構造・接道の状況・付帯工事の有無で変わります(2026年8月時点)。

駐車場として貸す

これは、解体後の土地を月極駐車場やコインパーキングとして貸す方法で、初期費用を抑えられます。

契約期間が短く転用や売却がしやすいため、将来自分で使う可能性を残したい場合に向いています。

資材置き場として貸す

これは、整地だけで貸せる使い道で初期費用は最も小さく、建設業者や運送業者の立地しだいで借り手が決まります。

賃貸住宅を建てて経営する

これは、解体後にアパートや戸建て賃貸を新築して貸す方法で、初期投資は最も大きくなります。

住宅用地特例が適用され収益も最大になりうる一方、借入を伴うため順序を誤ると影響の大きい方法です。

なお、建築を伴う提案は提案する側の利害が入りやすいため、建てない場合の収支も並べて比べてください。

更地のまま貸す

これは、建物を建てずに土地を事業者へ貸す方法で、初期費用はほとんどかかりません。

事業用定期借地権では契約期間が10年以上50年未満となり、その間は自由に使えません。

所有を手放す空き家の使い道

使い道が見つからない、費用を回収できる見込みもない場合は、所有を手放す方向を検討します。

手放すことは活用の失敗ではなく、判断基準を当てはめた結果として選ばれる選択肢の1つです。

売却する

建物付きなら解体費は不要ですが買い手は自分で改修できる層に限られ、更地にすれば買い手層は広がります。

また、相続した空き家では、要件を満たせば使える控除の特例があるため、売る時期そのものが手取りに影響します。

空き家バンクに登録して買い手を探す

市場で買い手が付きにくくても、自治体の空き家バンクに登録すれば移住希望者に届く場合があります。

手順は所在自治体の窓口へ相談し、現地確認を経て登録するという流れです。

相続土地国庫帰属制度を利用する

相続で取得した土地を国に引き取ってもらえる制度で、令和5年4月に始まりました。

建物がある土地は却下されるため、利用するには解体が前提です(出典:法務省「相続土地国庫帰属制度の概要」)。

審査手数料は土地一筆あたり14,000円で、承認後は原則20万円の負担金を納めます。

相続放棄は相続の開始を知った時から3か月以内にしか申述できず、預貯金を含む相続財産のすべてを手放すことになります(出典:e-Gov法令検索「民法」)。

これに対して、相続土地国庫帰属制度は、すでに相続した後でも土地だけを手放せる点が異なるのです。

空き家の使い道を選ぶ4つの判断基準

使い道の候補が絞れたら、需要・初期投資と回収期間・ランニングコスト・出口の4点で比べます。

どれか1つでも成り立たない候補を外す順序で絞り込み、残った候補は複数パターンの収益シミュレーションで比べましょう。

周辺にその用途の需要があるか

需要の確認とは、用途ごとに決まった指標を調べ、候補から外す線引きに照らすことを指します。

用途調べる指標(無料で確認できるもの)候補から外す目安
戸建て賃貸不動産ポータルで同一エリア・同間取りの募集件数と平均掲載日数掲載が3か月以上残る物件が多い
駐車場半径300メートル以内の月極の空き区画数と月額相場空き区画が常に目立つ
民泊・宿泊施設自治体の観光入込客統計と近隣の宿泊施設の稼働状況繁忙期以外の稼働が見込めない
店舗・シェアオフィス同じ通りの空き店舗数と近隣の募集賃料空き店舗が並んでいる

いずれも無料で調べられる情報ばかりで、判断に必要なのは指標2つと、その用途を外す目安です。

初期投資と回収期間

改修費・解体費・設備費の合計を年間の手取り収入で割ると、回収年数=初期投資÷(年間収入-年間経費)が出ます。

回収年数が残存年数を超える場合、途中で建て替えか解体が必要になり計算が成り立ちません。

毎年のランニングコスト

使い道を決めた後も、固定資産税・保険料・管理委託費・修繕への備えが毎年出ていきます。

空き家管理の委託費は月5,000円から1万円程度が目安で、訪問頻度や内容で変わります(2026年8月時点)。

何年運用して最後にどうするか

終わり方を先に決めておくと、選ぶべき使い道は自然に絞られます。

事業用定期借地や介護事業者への賃貸は方針転換が難しく、駐車場や資材置き場は途中で売却や自家利用へ切り替えられます。

空き家の使い道別に見る初期費用と収益性の比較

ここまでの使い道を、初期費用・収益性・手間・出口の自由度・向いている空き家の条件で比べます。

5つの列は前章の4基準と対応し、初期費用の目安は整地のみで数十万円、解体を伴えば100万〜200万円です。

使い道初期費用収益性(手取り)手間出口の自由度向いている空き家の条件
自分や家族が住む中支出の削減小高通勤・通学圏にあり構造に問題がない
戸建て賃貸として貸す中中中中ファミリー層の需要がある住宅地
DIY型賃貸として貸す小中小中改修費をかけられない
シェアハウスとして貸す大中〜大大低部屋数が多く駅や学校に近い
民泊・宿泊施設として貸す大中〜大大中観光地に近く条例の制限が緩い
店舗・シェアオフィスとして貸す大中〜大中低人通りのある通り沿いにある
トランクルーム・貸倉庫として貸す小小小高集合住宅が多く収納の需要がある
介護・福祉事業者に貸す小〜中中小低平屋か1階が広く駐車場を取れる
自治体に貸す小〜中小小中移住の需要がある地域にある
駐車場として貸す小小〜中小高住宅や商業施設が密集している
資材置き場として貸す最小小最小高事業所や工事現場が多い
賃貸住宅を建てて経営する最大大中低賃貸需要が継続的にある
更地のまま貸す小中小低事業者の出店需要がある
売却する解体費のみ一時金小該当なし使う予定がまったくない

まず、右端の条件で自分の空き家に当てはまる行を残し、次に初期費用の列で出せる金額を超える行を外します。

最後に出口の自由度を確かめ、10年以内に方針を変える可能性があるなら「低」の行を外してください。

空き家の使い道に使える公的な支援制度

改修や解体の費用には自治体の補助金が使える場合があり、売却時には税の特例があります。

国の補助事業には自治体が使うものと所有者が申請できるものがあり、両者は別物です。

解体・改修に使える補助金

所有者が申請できるのは、老朽危険空き家の除却費補助やリフォーム費の補助です。

なお、着工後の申請は原則として認められないため、手続きの順序にご注意ください。

住宅セーフティネット制度の登録住宅なら、国の改修費補助の対象になる場合があります(出典:国土交通省「住宅セーフティネット制度」)。

相続した空き家を売るときの3,000万円特別控除

被相続人が一人で住んでいた家屋と敷地を相続して売る場合、譲渡所得から最大3,000万円を控除できます。

対象は昭和56年5月31日以前に建築された家屋で、区分所有建物の登記がされていないものです。

また、令和6年1月1日以後の譲渡では、相続人が3人以上の場合に控除額の上限が2,000万円になります。

売却代金が1億円以下であること、相続してから売るまで賃貸や居住に使っていないことも要件です。

売却の期限は、相続の開始があった日から3年を経過する日の属する年の12月31日までとなります。

制度自体の適用期限は令和9年12月31日までの譲渡です(出典:国税庁「被相続人の居住用財産を売ったときの特例」)。

以上は2026年8月時点の内容で、適用の可否は売却前に税務署か税理士へご確認ください。

空き家の使い道に関するよくある質問

検索でよく見られる疑問のうち、本文で触れきれなかったものにお答えします。

個別の事情に沿った疑問がある場合は、土地活用のよくあるご質問も参考になります。

空き家は何年で住めなくなりますか?

一律の年数はなく、締め切ったままなら数年でカビや腐朽が進み、月1回の換気と通水があれば長く使えます。

空き家だと固定資産税が6倍になりますか?

空き家であるだけでは上がらず、勧告を受けて住宅用地特例から外れた場合に上がります。

倍率は土地の面積区分と自治体の税率で変わるため、6倍は上限の目安とお考えください。

ユニークな空き家の使い道はありますか?

ユニークな空き家の使い道は、古民家カフェ、地域の交流拠点、バイクガレージなどが例として挙げられます。

個人で始めやすいのは小規模なガレージ用途で、交流拠点は自治体や事業者との連携が必要です。

まとめ

空き家の使い道は「建物を残す」「解体して土地を使う」「所有を手放す」の3方向に整理できます。

選ぶ順序は、需要・初期投資と回収期間・ランニングコスト・出口の4基準を上から当てはめる形です。

特に、難しいのは、判断に必要な数字を自分ひとりで揃えることです。

株式会社土地活用コンサルティングは、特定のメーカーに属さない第三者の立場で土地活用を支援しています。 使い道を決めかねている段階でも、判断の材料を揃えるところからご相談ください。

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