コラム

公開日 2026.09.18 更新日 2026.09.18

土地の使用貸借とは?賃貸借との違いや相続・税務を解説

土地の使用貸借は、親の土地に子どもが家を建てる場合や、親族・知人に土地を無償で貸す場合など、身近な場面で利用される契約です。
一方で、契約終了の条件や相続時の扱い、贈与税・固定資産税・相続税など、確認しておきたいポイントも少なくありません。
契約内容が曖昧なままだと、返還や相続をめぐるトラブルにつながる可能性もあります。

本記事では、土地の貸し借りについての基本的なルール、契約書に盛り込む項目まで分かりやすく解説します。

土地の使用貸借が行われる代表的なケース

土地の使用貸借は、親子や親族、知人など、信頼関係のある相手との間で行われることが多い契約です。
代表例として、親の土地に子どもが家を建てる場合や、実家で無償同居する場合、駐車場や資材置き場として貸す場合があります。

以下では、それぞれの特徴や注意点を解説します。

親の土地に子どもがマイホームを建てるケース

親の土地に子どもがマイホームを建てる場合、親が土地を無償で使用させることで、使用貸借の関係が生じることがあります。
賃料が発生しない点が特徴ですが、土地の所有権は親に残るため、子どもが自由に売却したり担保として処分したりできるわけではありません。

また、将来の相続や土地の返還時期をめぐって認識の違いが生じる可能性もあります。
親子間であっても、使用目的や期間、費用負担などを事前に確認し、必要に応じて契約内容を書面に残しておくことが大切です。

実家で親子が家賃なしで同居しているケース

親が所有する土地や建物に子どもが家賃を支払わず同居している場合も、状況によっては使用貸借とみなされることがあります。
無償で利用している点では賃貸借と異なりますが、単に家族として同居しているだけなのか、独立した使用貸借契約があるのかは、具体的な事情によって判断されます。

なお、契約書がなくても合意が認められる場合はありますが、相続や退去の場面で認識が食い違うおそれもあるでしょう。
そのため、利用範囲や費用負担、将来の扱いを家族間で確認しておくことが重要です。

駐車場や資材置き場として無償で貸すケース

空いている土地を駐車場や資材置き場として親族や知人に無償で貸す場合も、使用貸借となることがあります。
賃料を受け取らないため借主の費用負担を抑えられますが、利用方法を決めないまま貸すと、想定外の物を置かれたり、利用範囲が広がったりするかもしれません。

また、利用期間や原状回復の方法が曖昧だと、返還時にトラブルへ発展することもあるでしょう。
そのため、無償で貸す場合でも、使用目的や範囲、期間、返還時の条件などをあらかじめ明確にしておくことが大切です。

土地の使用貸借に関わる税金のポイント

土地の使用貸借では、贈与税や固定資産税、相続税について、賃貸借とは異なる取扱いが生じる場合があります。
特に、無償利用による贈与税の扱いや固定資産税の納税義務者、相続時の土地評価は確認しておきたいポイントです。

以下では、税目ごとの基本的な考え方を解説します。

贈与税が発生しないと判断される理由

親の土地を子どもが地代や権利金を支払わずに借りて家を建てるなど、土地を使用貸借する場合、原則として借主に贈与税は課されません。
たとえば国税庁では、使用貸借により土地を使用する権利の価額をゼロとして取り扱っているため、借地権相当額の贈与を受けたとはみなされないとしています。

ただし、土地の所有権そのものを無償で移転した場合や、地代に代わる経済的利益の授受がある場合は扱いが異なる可能性があります。

固定資産税は誰が負担するのか

土地を使用貸借している場合でも、固定資産税の納税義務者は原則として借主ではなく土地の所有者です。
固定資産税は、毎年1月1日時点で固定資産課税台帳に所有者として登録されている人に課されるため、無償で他人に土地を使わせても納税義務者は通常変わりません。

ただし、当事者間の合意により、借主が固定資産税相当額を実質的に負担する取り決めを設けることはあります。
そのため、この場合でも、地方税法上の納税義務者そのものが借主へ移るわけではない点に注意が必要です。

相続税における自用地評価の扱い

使用貸借されている土地を相続する場合、相続税評価では原則として自用地として評価されます。
国税庁では、使用貸借による土地の使用権の価額をゼロとして扱うため、賃貸借のように借地権相当額を差し引いて土地を評価することは基本的にありません。

そのため、使用貸借中であることだけを理由に、土地の評価額が下がるとは考えないことが大切です。
ただし、実際の相続税額は土地の形状や路線価、各種特例の適用などによっても変わるため、個別の条件を確認する必要があります。

土地を使用貸借で貸す際に押さえるべき注意点

土地を使用貸借で貸す場合は、無償だからこそ契約条件を明確にし、将来の認識違いや返還時のトラブルを防ぐことが重要です。
特に、使用目的や範囲、原状回復、金銭の授受、契約内容の書面化などは事前に確認する必要があります。

以下では、貸す際に押さえておきたい注意点を解説します。

使用目的と使用範囲を明確に定める

土地を使用貸借で貸す際は、借主が何のために、どの範囲まで土地を利用できるのか明確に定めておくことが重要です。
たとえば、住宅の敷地や駐車場として使用するなど、具体的な用途を決めておけば、貸主が想定していない目的で利用されるリスクを抑えられます。

また、土地の一部だけを貸す場合には、図面などを用いて対象範囲を示しておくと認識を共有しやすくなります。
目的外利用や第三者による使用を防ぐためにも、利用条件や変更時の手続きを契約書へ具体的に記載しておきましょう。

原状回復の条件を具体的に決めておく

土地を返還する際のトラブルを防ぐためには、原状回復の範囲や方法、費用負担について契約時に具体的に定めておくことが大切です。
たとえば、借主が建物やフェンス、舗装などを設置した場合、それらを撤去して返還するのか、貸主が残置を認めるのかを決めておきます。

また、撤去費用を誰が負担するのかも明確にしておく必要があるでしょう。
原状回復の条件が曖昧なままだと、返還時に追加工事や費用をめぐって認識が食い違う可能性があるため、契約書へ具体的に記載しておくことが重要です。

地代・権利金は受け取らないようにする

使用貸借は無償で土地を使わせる契約であるため、土地使用の対価に当たる地代や権利金を受け取らないことが重要です。
継続的に金銭を受け取っている場合、その内容や契約の実態によっては賃貸借として扱われる可能性があります。

一方、固定資産税など土地の維持に必要な費用を借主が負担しても、そのことだけで直ちに賃貸借になるとは限りません。
ただし、金銭の性質が曖昧だと判断が難しくなるため、費用を受け取る場合は目的や金額、精算方法を契約書などで明確にしておきましょう。

口約束ではなく契約書を必ず作成する

使用貸借は口頭の合意でも成立する場合がありますが、土地を長期間利用するケースでは、契約内容を書面に残しておくことが重要です。
また、契約書がないと使用目的や契約期間、返還時期などについて、後から貸主と借主の認識が食い違う可能性があります。

特に親族間では、相続によって当事者が変わった際に、当初の取り決めを確認できなくなることもあるでしょう。
そのため、土地の所在地や使用範囲、期間、費用負担、原状回復などを具体的に記載し、双方で内容を確認したうえで保管しておくことが大切です。

土地の使用貸借契約書に盛り込むべき項目

土地の使用貸借契約書には、対象となる土地や使用目的、契約期間、解除条件、原状回復などを具体的に記載し、当事者間の認識をそろえておくことが重要です。
内容が曖昧だと、返還時や相続時にトラブルへ発展する可能性があります。

以下では、契約書に盛り込んでおきたい主な項目を解説します。

所在地や面積など土地の基本情報

土地の使用貸借契約書では、まず対象となる土地を特定できるよう、所在地や地番、地目、面積などの基本情報を正確に記載します。
その際、登記事項証明書などの内容と照らし合わせておけば、別の土地と混同するリスクを抑えられるでしょう。

また、土地の一部だけを貸す場合は、図面や区画図を添付し、境界や使用範囲を具体的に示しておくことが大切です。
対象範囲が明確であれば、後から「どこまで使えるのか」という認識違いが生じにくくなり、返還時や相続時の確認にも役立ちます。

土地の使用目的と用途の限定

土地の使用目的や用途は、契約書にできるだけ具体的に記載しておくことが重要です。
例えば、「住宅の敷地として使用する」「駐車場として利用する」など、認める用途を明確にすれば、貸主が想定していない使い方を防ぎやすくなります。

また、用途変更や第三者による利用、建物の新築・増改築などを行う場合に、事前の承諾を必要とする旨も定めておくと安心です。
ただし、使用目的が曖昧なままだと、目的外利用をめぐって契約違反かどうか争いになる可能性があるため、双方で認識をそろえておきましょう。

契約期間と更新の有無

使用貸借は契約期間を定めなくても成立しますが、土地をいつまで利用できるのかを明確にするため、契約期間を記載しておくことが望ましいでしょう。
たとえば、「〇年〇月〇日まで」と具体的に定める方法のほか、住宅の使用期間など一定の目的が終了するまでとする方法もあります。

また、期間満了後に自動更新するのか、双方の協議により更新するのかも決めておくことが大切です。
契約期間や更新方法を明文化しておけば、貸主が返還を求める時期や、借主が利用を続けられる条件を確認しやすくなります。

契約解除の要件

契約解除に関する認識違いを防ぐため、どのような場合に契約を終了できるのかを契約書へ具体的に記載しておくことが重要です。
たとえば、借主が定められた使用目的に反して土地を利用した場合や、無断で第三者に使用させた場合などを解除事由として定める方法があります。

また、期間や使用目的の有無によって民法上の返還時期の考え方も異なるため、契約独自の終了条件を設ける場合は内容を整理しておきましょう。
解除時の通知方法や返還期限まで定めておけば、実際に契約を終える際の手続きも進めやすくなります。

借主による原状回復義務

土地を返還する際の原状回復については、どの範囲まで借主が対応するのかを契約書に明確に記載しておくことが大切です。
たとえば、借主が建物やフェンス、舗装などを設置した場合、それらを撤去して更地に戻すのか、貸主が残置を認めるのかをあらかじめ決めておきます。

また、撤去や修復にかかる費用を誰が負担するのかも定めておくと安心です。
原状回復の内容が曖昧だと、返還時に追加工事や費用負担をめぐって争いになる可能性があるため、対象物や方法を具体的に示しておきましょう。

転貸・譲渡・増改築などの禁止事項

転貸や権利の譲渡、建物の増改築などについては、借主が自由に行えないよう、契約書でルールを定めておくことが重要です。
貸主の承諾なく第三者に土地を使用させると、当初想定していなかった人物が利用し、権利関係が複雑になる可能性があります。

また、無断で建物を新築・増改築すると、返還時の撤去や原状回復をめぐる負担も大きくなりかねません。
そのため、禁止事項を列挙するだけでなく、例外的に認める場合は事前に書面で承諾を得るなど、手続きまで具体的に定めておくと安心です。

まとめ:土地の使用貸借の基本と相続・税務の違いを整理

土地の使用貸借は、土地を無償で利用できる一方、賃貸借とは契約期間や第三者への対抗力、相続・税務上の扱いなどに違いがあります。
特に、貸主・借主が亡くなった場合の契約継続や終了、使用貸借中の土地における相続税評価、固定資産税の負担者などは、事前に確認しておきたいポイントです。

また、親族間の契約であっても、使用目的や期間、返還条件、原状回復、禁止事項などを書面で明確にしておくことで、将来の認識違いを防ぎやすくなります。
土地を使用貸借で貸し借りする際は、法律・税務の基本を押さえたうえで契約内容を整理し、不明点がある場合は専門家への相談も検討しましょう。

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