コラム
アパートを満室にする方法|空室の原因別に費用ゼロから始める手順

退去した部屋の募集を出しても入居申し込みが入らないとき、やみくもに対策を増やすだけでは空室は埋まりません。
そのため、まず原因を切り分け、費用のかからない対策から試すことが早道です。
この記事では、空室の原因を特定する方法から募集条件の調整、さらに費用をかける改修まで、取り組む順序に沿って解説します。
アパートを満室にするために最初に行う空室原因の特定
空室が続くアパートで最初に行うのは、家賃・設備・募集方法のどこに原因があるかを切り分けることです。
なぜなら、原因が分からないまま対策を重ねても、効果の出ない支出だけが積み上がるためです。
さらに、空室によって失うのは家賃収入だけではありません。
換気されない状態が続くと、室内や設備の劣化が進みやすくなります。
例えば、家賃6万円の部屋が2戸とも1年間空室になれば、減収額は年間144万円にのぼります。
空室期間の長さ
退去から次の入居申し込みまでにかかった月数を確認すると、募集活動がどの程度遅れているのかを数字で把握しやすくなります。
また、賃貸需要が高まりやすい時期は1月から3月に集中するため、この期間を逃すと次の繁忙期まで長く待つ可能性があります。
さらに、総務省の「令和5年住宅・土地統計調査」では、賃貸用の空き家が443万6千戸あると報告されています。
したがって、募集情報を掲載したまま待つだけでは空室が自然に埋まるとは限らず、原因に応じた見直しが必要です。
賃料・初期費用と周辺相場との差
まず、同じエリア内で間取りが共通する部屋について、現在の募集賃料を複数のポータルサイトで比較します。
また、新築時に設定した賃料を据え置いている物件は、周辺の募集条件が変わるにつれて相対的に割高になりがちです。
さらに、入居希望者が実際に比較するのは、敷金・礼金・保証料・仲介手数料を合計した初期費用の総額です。
そのため、家賃が同額でも初期費用に10万円の差があれば、入居申し込みの件数に影響する可能性があります。
設備・間取りと入居者ニーズのずれ
まず、周辺で入居者が決まっている部屋に備わっていて、所有する物件にはない設備を具体的に洗い出します。
さらに、仲介会社には、内見まで進んだにもかかわらず契約に至らなかった理由を具体的に確認することが重要です。
そのため、この確認を省くと、需要の低い設備へ費用をかける結果となり、投資額を回収できないおそれがあります。
費用をかけずに空室を埋める方法
まず、費用がほとんどかからない対策や数千円程度で済む対策は、効果が出なくても大きな損失につながりにくいため、最初に試しやすい方法です。
また、具体的には、室内の清掃や募集情報の作り直し、仲介会社への働きかけという3つの対策に取り組みます。
さらに、効果は内見数と申し込み数で確認できるため、つぎに費用をかける対策を判断する材料としても役立ちます。
共用部と室内を清掃する
まず、内見に訪れた人が最初に目にするのは、エントランス・ゴミ置き場・駐輪場など、共用部分の管理状態です。
また、郵便受けにたまったチラシやクモの巣は、費用をかけずに除去でき、放置自転車も管理ルールに沿って整理できます。
さらに、室内では照明を点けて窓を開け、対策後の内見数と申し込み数を記録し、反応の変化を確認しておきましょう。
募集写真と物件情報を作り直す
まず、部屋探しをする人はポータルサイトの一覧で候補を絞るため、掲載情報の第一印象が問い合わせ数を左右します。
そのため、写真は晴れた日の日中に撮り直し、水回り・収納・窓からの眺めまで掲載すると、部屋の魅力が伝わりやすくなります。
さらに、オンライン内見の可否を明記しておけば、遠方に住む人が日程調整を理由に検討を諦める事態も避けやすくなるでしょう。
仲介会社が紹介しやすい状態をつくる
まず、入居希望者に部屋を紹介するのはオーナーではなく、仲介会社の営業担当者である点を押さえておきます。
そのため、現地にキーボックスを設置し、申込手続きを簡素にすると、内見案内や契約手続きの負担を軽減しやすくなります。
また、仲介会社への広告料を上乗せする方法もあり、目安は家賃の1か月分~2か月分です(2026年8月時点)。
したがって、家賃6万円なら支出は6万円~12万円になるため、空室期間が何か月続けば費用に見合うかを基準に判断します。
募集条件を見直して申し込みにつなげる方法
まず、募集条件の見直しとは、物件そのものを変えずに初期費用や入居条件を調整し、入居希望者が申し込みやすい状態に整える方法です。
また、ここではフリーレントや初期費用の減額、ペット可、外国人入居者の受け入れを取り上げ、楽器可なども同じ判断基準で検討します。
フリーレントを設定する
まず、入居後の一定期間をフリーレントにすると、入居希望者が契約時に負担する初期費用を大きく抑えられます。
また、家賃8万円で2か月分を無料にした場合、初年度は16万円の減収になりますが、無料期間後は通常の家賃に戻ります。
月5,000円を値下げすると年間6万円の減収が入居中ずっと続くため、長期的には負担が大きくなりやすいでしょう。
ただし、短期間で解約されるとフリーレント分を回収できないため、短期解約違約金を契約条件に設ける方法があります。
例えば学生向けの物件では合格発表の時期に合わせるなど、募集対象者の動きに応じて無料期間を設定する方法も有効です。
敷金・礼金・更新料を減額する
まず、敷金・礼金・更新料は募集条件の見直し項目として並べられがちですが、受け取る時期や役割はそれぞれ異なります。
具体的には、敷金は退去時の費用に充てる預り金、礼金は入居時の一時収入、更新料は契約更新時に受け取る収入です。
ただし、敷金を0円にすると、退去時に原状回復費を請求する必要が生じても、充当できる預り金がない状態になります。
国土交通省の「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」では、経年変化や通常損耗の費用は貸主負担とされています。
一方、借主へ請求できるのは、故意・過失による損傷や通常の使用方法を超えて生じた損耗など、借主に責任がある範囲です。
さらに、更新料が家賃1か月分の場合、家賃6万円の部屋に10年間住むと、4回分に当たる24万円を受け取れない計算になります。
ペット可に変更する
まず、犬や猫と暮らせる賃貸物件は供給が限られているため、条件が合う入居希望者から選ばれやすくなる傾向があります。
また、家賃や敷金を上乗せできる場合がある一方で、臭いや傷、鳴き声によるトラブルが生じるおそれも否定できません。
さらに、国土交通省のガイドラインには、ペットによる柱やクロスの傷、臭いを借主負担と判断した事例も掲載されています。
そのため、ペット可へ変更する時は、飼育できる種類や頭数、敷金の上乗せ額などを契約条項へ具体的に記載する必要があります。
ただし、棟の一部だけをペット可にすると既存入居者から不満が出る可能性もあるため、棟単位で方針を決めて事前に説明しておくとよいでしょう。
外国人入居者を受け入れる
出入国在留管理庁の「令和7年末現在における在留外国人数について」によると、在留外国人は412万5,395人でした。
また、前年末から9.5%増えて初めて400万人を超えており、住まいを探す外国人入居者の増加も見込まれます。
ただし、国籍にかかわらず家賃滞納や退去後の連絡不能に備えるには、保証体制と連絡手段の整備が欠かせません。
そのため、家賃債務保証会社の利用を条件にし、生活ルールを入居前に文書で説明できるかを基準に判断するとよいでしょう。
費用をかけて部屋の競争力を高める方法
募集条件を調整しても入居が決まらない時は、つぎに設備や内装へ費用をかけ、部屋そのものの競争力を高めます。
例えば、設備の導入は1万円台から始められますが、水回りを含むリフォームは1室50万円~300万円が目安です(2026年8月時点)。
ただし、工事内容によって金額の幅が大きいため、投資上限を先に決めなければ費用を回収できないおそれがあります。
入居者に人気の設備を導入する
全国賃貸住宅新聞の「入居者に人気の設備ランキング2025 家賃アップ編」では、単身者向けの1位が高速インターネット無料でした。
また、回線速度が1Gbps以上なら賃料を1,000円ほど上げられた例もあり、無料かどうかだけでなく通信品質も比較されています。
さらに、同紙の必須設備編では単身者向けの1位がエアコンであり、未設置の部屋は検討対象から外れる可能性があります。
そのため、導入費用が小さい設備から優先すると回収を早めやすく、モニター付きインターホンは1万円~3万円が目安です(2026年8月時点)。
水回りと間取りをリフォームする
1室のリノベーション費用は約50万円~60万円で、浴室とキッチンまで含めると200万円~300万円に達します(2026年8月時点)。
ただし、3点ユニットの分離は評価が分かれやすく、20㎡前後の狭い部屋では居室が狭くなり、逆効果になる可能性もあります。
そのため、まずは原状回復に追加できる小規模な工事から始め、内見数や申込数の反応を確認してから大きな工事へ進めるのが順当です。
費用の回収年数から投資額を決める
投資できる上限額は、空室で失っている家賃収入と、工事後に見込める賃料上昇や空室期間の短縮効果から逆算します。
例えば、家賃6万円の部屋に60万円を投じて賃料が月5,000円上がっても、年間増収は6万円なので回収には10年必要です。
一方、同じ60万円の投資で空室期間が退去のたびに1か月短くなれば、その都度6万円の家賃損失を減らせる計算になります。
この回収年数を共通の基準にすれば、清掃や広告料、フリーレント、設備投資までを同じ条件で比較しやすくなるでしょう。
なお、自分だけで比較しにくい時は、中立的な立場で複数案を試算する土地活用コンサルティングへ相談する方法もあります。
管理会社の見直しで満室経営に近づける方法
物件側で考えられる対策を尽くしても入居が決まらない場合は、募集を担当する管理会社の運用方法にも原因がないか確認します。
なぜなら、募集を掲載する媒体や問い合わせへの対応方法は会社ごとの差が大きく、その違いが内見数や申込数に表れるためです。
ここでは、管理会社の変更を判断する基準と、家賃保証によって収入を安定させる場合の注意点を順番に確認していきましょう。
管理会社を変更する判断基準
管理会社の変更を感覚だけで決めず、まずは毎月の報告書で確認できる具体的な数字を判断基準としてそろえます。
確認する項目は、掲載しているポータルサイトの数、問い合わせ件数、内見件数、申込件数という4つの数字です。
例えば、問い合わせがあるのに内見へ進まない場合は写真や募集条件、内見後に決まらない場合は部屋や家賃に課題があります。
また、報告や改善提案が届かない時は変更を検討できますが、先に具体的な改善を依頼するだけで対応が変わる場合もあります。
ただし、切り替え時には連絡先や家賃の引き落とし口座も変わるため、既存入居者への影響を事前に確かめることが重要です。
サブリース契約の注意点
サブリースによる家賃保証は、空室時でも一定の収入を得る仕組みですが、実際に部屋が埋まることを保証するものではありません。
また、賃貸住宅の管理業務等の適正化に関する法律では、サブリース業者への規制が第28条から第36条に定められています。
具体的には、誇大広告や不当な勧誘の禁止に加え、契約前の重要事項説明や書面交付などがサブリース業者の義務です。
さらに、国土交通省の賃貸住宅管理業法ポータルサイトには、勧誘時に見落としやすい重要項目がまとめられています。
例えば、将来の家賃減額の可能性や業者側からの契約解除、大規模修繕に伴う費用負担などが主な確認項目です。
そのため、契約までは1週間ほど検討期間を設け、賃貸経営の相談窓口など利害関係のない相手にも契約書を確認してもらいましょう。
退去を防いで満室を維持する方法
空室を埋める対策だけを続けても、既存入居者の退去を防げなければ、翌年以降も同じ募集作業を繰り返すことになります。
一方、1戸の退去を防げれば、空室期間1か月~2か月分の家賃に加え、広告料や原状回復費などの支出も抑えられます。
例えば、家賃6万円の場合は、空室期間や募集費用を含めると、退去を1件防ぐだけで10万円以上の効果が見込めるでしょう。
入居者の要望を吸い上げる
設備の不具合や共用部分の使いにくさは、入居者から申告されなければ管理側が気づけず、退去理由として表面化する可能性があります。
そこで、アンケートや意見箱を活用し、管理会社へ委託している場合は月次報告に入居者の要望が記載されているか確認します。
また、更新の3か月前に要望を聞き取り、数万円程度の修繕で退去を防げるかという基準で対応の優先順位を判断するとよいでしょう。
退去の予兆を早くつかむ
退去の予兆として確認したいのは、契約更新時期の到来、設備不具合の申告増加、近隣トラブルの発生という3つです。
こうした兆候を把握したら、まず更新案内を前倒しし、設備交換が必要な場合は回収年数を基準に実施を判断します。
さらに、引き止めが難しい場合でも、原状回復の発注先と募集写真の撮影日を先に確保すれば、空室期間を短縮しやすくなります。
やってはいけない満室対策
空室が長引いて焦ると選びやすいのは、家賃の値下げ、回収を考えない工事、条件だけを緩める対応という3つです。
これらは短期的に効果が出る場合もありますが、長期的には収益性や既存入居者の満足度を下げるおそれがあります。
そのため、対策の良し悪しは、事前に数字を確認したか、運用ルールを決めたかという2つの基準で判断します。
相場と収支を確認しない家賃の値下げ
一度下げた家賃は入居期間中ずっと続くだけでなく、同じ物件で次回募集する時の基準としても残りやすい傾向です。
また、入居中に家賃を元の水準へ戻すのは難しいため、原則として入居者が退去するまで減収が続くと考える必要があります。
例えば、家賃6万円を月5,000円下げると、年間6万円、10年間では合計60万円の減収が発生する計算です。
さらに、収益還元法で価格を判断する買主には収益力が低く見えるため、値下げは将来の売却価格にも影響する可能性があります。
そのため、家賃を下げる時は同じエリアの募集事例で目安を確認し、対象期間や戸数を限定して元に戻せる形にしましょう。
費用対効果を検証しないリフォーム
リフォームの内容から先に決めてしまうと、工事後にどの程度の収益改善が見込めるかという検討が後回しになります。
例えば、200万円をかけても家賃が月3,000円しか上がらなければ、単純計算で回収まで約55年かかる計算です。
また、周辺の入居需要と合わない工事は、投資額が小さくても申込数の増加につながらず、費用を回収しにくくなります。
例えば、防音室やペット向けの内装も、そのエリアに対象となる入居希望者が少なければ空室対策として機能しません。
ルールを決めないままの入居条件の緩和
ペット可や楽器可、ルームシェア可などは、適用条件を決めないまま始めると、既存入居者とのトラブルを招くおそれがあります。
例えば、騒音や臭いを理由に既存入居者が退去すれば、1戸を埋めても別の空室が生じ、収支が改善しない可能性があります。
そのため、条件を緩和する前に、適用範囲、契約条項、敷金と原状回復費の扱い、既存入居者への説明方法の確定が必要です。
対策を尽くしても満室にならない場合の選択肢
対策を重ねても収支が改善しない場合は、賃貸経営を続ける案だけでなく、物件の別用途や売却も同じ基準で比較します。
また、総務省の「令和5年住宅・土地統計調査」では、全国の空き家が900万2千戸、空き家率が13.8%で、いずれも過去最多です。
ただし、入居需要そのものが減っているエリアでは、募集方法や設備を見直しても満室を維持するのが難しい場合があります。
さらに、賃料を下げて入居が決まっても、手取りが管理費や修繕費で消えるなら、保有を続ける意義は小さくなるでしょう。
そこで、1つ目は倉庫や事務所への用途変更、2つ目は保有と売却の手取りを10年単位で比べる方法として整理できます。
加えて、3つ目には相続まで見据えた資産配分があり、物件単体ではなく家計全体から判断する視点も欠かせません。
そのため、判断材料を数字でそろえ、受注を前提としない土地活用コンサルティングへ試算を依頼する方法も選べます。
最後に、満室にすること自体が目的になっていないかを確認し、収益や資産価値に合う方針を選ぶことが重要です。
まとめ|満室に近づけるための対策の優先順位
満室に近づけるには、原因の特定、費用を抑えた対策、募集条件の調整、設備投資、管理体制の見直しという順序で進めます。
また、どの段階でも共通する判断基準は、空室で失う金額や投資した費用を何年で取り戻せるかという回収年数です。
それでも収支が合わない場合は、賃貸経営を続けることだけに固執せず、用途変更や売却も含めて比較する必要があります。
なお、着手する順序を整理しにくい時は、受注を前提としない第3者へ複数の収支パターンの試算を依頼する方法もあります。

