コラム

公開日 2026.08.26 更新日 2026.09.24

相続した土地を放置するとどうなる?リスクと4つの選択肢

親から相続した土地を、使わないまま何年も置いたままにしている方は少なくありません。

毎年届くのは固定資産税の納税通知書だけ、という状態かもしれません。

また、相続した土地の放置には、相続登記が済んでいない状態と、土地を使わず管理もしていない状態の2つがあります。

本記事では、それぞれで何が起きるのかを法令にもとづいて整理し、放置をやめたあとに残る4つの選択肢まで解説します。

目次

相続した土地の放置に含まれる2つの状態

相続した土地の放置は、相続登記が済んでいない状態と、土地の利用も管理もしていない状態の2つに分けられます。

なお、相続登記とは、亡くなった人の名義になっている不動産を相続人の名義に変更する登記のことです。

前者には期限と過料が定められている一方、後者に期限はなく、費用だけが毎年発生し続けます。

相続登記を放置した場合の法的リスク

相続登記は2024年4月1日から申請が義務になり、期限を過ぎると過料の対象になるでしょう。

ただし、期限は相続の開始を知った時期によって異なり、遺産分割がまとまらない場合に備えた制度も設けられています。

ここでは、相続登記を放置した場合の法的リスクを解説します。

3年以内の申請義務と違反時の過料

不動産を相続で取得したことを知った日から3年以内に、相続登記を申請しなければなりません(出典:法務省「相続登記の申請義務化に関するQ&A」)。

正当な理由がないのに怠った場合は、10万円以下の過料の対象になります(不動産登記法第164条)。

また、法務省は正当な理由の例として、相続人が極めて多数であることや、遺言の有効性が争われていることを挙げています。

正当な理由に当たるかは個別に判断されるため、法務局や司法書士に確認してください。

令和6年3月以前に相続した土地の申請期限

昔の相続だから義務化とは無関係、と考えている方もいますが、義務化の前に相続した土地も対象です。

そのため、2024年3月31日以前に相続を知った土地については、2027年3月31日までに相続登記を申請する必要があります(同上)。

期限に間に合わないときの相続人申告登記

遺産分割の話し合いがまとまらないまま3年が近づいたときの制度が、相続人申告登記です。

相続の開始と自分が相続人であることを法務局に申し出れば、申請義務を果たしたものとみなされます(同上)。

ただし、所有権の移転登記ではないため、遺産分割が成立した日から3年以内に、あらためて相続登記の申請が必要です。

相続登記を放置した場合の権利関係のリスク

登記を放置している間に生じる本当の負担は、過料よりも権利関係です。

相続人の人数、判断能力、そして他人の債権によって、土地を動かす合意そのものが取れなくなるためです。

以下で詳しく解説します。

相続人の増加による遺産分割協議の難航

相続人が3人の場合は、売却して分けるという話もまとまります。

しかし、登記をしないまま次の相続が起きると、その3人がそれぞれの配偶者や子に引き継がれ、権利者は10人にも20人にも膨らみます。

また、遺産分割協議は相続人全員の合意がなければ成立せず、1人でも欠ければ登記も売却も進みません。

相続人の判断能力低下による協議の停止

相続人がそろっていても、協議が成立しない事態があります。

相続人の1人が認知症などで判断能力を失うと、その人が有効に合意できなくなるためです。

なお、その場合は家庭裁判所に成年後見人の選任を申し立てることになり、選任までに数か月を要します。

他の相続人の債権者による持分の差し押さえ

自分に落ち度がなくても、土地が動かせなくなることがあります。

遺産分割が済むまでの土地は相続人全員の共有であり、各相続人が法定相続分の持分を持つ状態です。

そのため、他の相続人に借金があると、その債権者が本人に代わって法定相続分どおりの登記を入れ、持分を差し押さえる場合があります。

相続登記を放置した場合の資産価値のリスク

名義が亡くなった人のままの土地は、売ることも担保に入れることもできません。

さらに、時間が経つほど税の特例は期限切れになり、必要な書類も集まりにくくなります。

ここでは、相続登記を放置した場合の資産価値のリスクを紹介します。

売却・担保設定ができない状態

所有権そのものは相続の時点で相続人に移っていますが、登記名義が被相続人のままでは買主への移転登記ができません。

さらに、金融機関は登記名義人以外の土地に抵当権を設定できないため、その土地を担保とする借入も難しくなります。

そのため、アパートや駐車場の整備に必要な初期費用を借入でまかなえず、土地活用の選択肢も大きく制限されるでしょう。

譲渡所得の特例が使えなくなる期限切れ

相続税を納めた人が相続財産を売った場合、納めた相続税の一部を取得費に加算できる制度があります。

期限は相続の開始からおよそ3年10か月で、これを過ぎると適用できません(出典:国税庁「相続財産を譲渡した場合の取得費の特例」)。

なお、適用の可否は相続税の納付の有無でも変わるため、税理士への確認をおすすめします。

必要書類の入手困難による費用の増加

相続登記に必要な戸籍は、放置が長引くほど通数が増え、司法書士に頼む場合は報酬も膨らみます。

また、住民票の除票と戸籍の附票は2019年6月の改正前まで保存期間が5年とされ、古い相続では廃棄済みの場合もあります。

なお、交付手数料は戸籍全部事項証明書が1通450円、除籍と改製原戸籍が1通750円です(出典:e-Gov法令検索「地方公共団体の手数料の標準に関する政令」)。

土地そのものを放置した場合に生じる負担

登記を済ませても、使わない土地を持っている限り税と管理の負担は毎年発生します。

更地か建物付きかで税額の考え方は変わり、管理を怠れば近隣への影響も出るでしょう。

以下では、土地そのものを放置した場合に生じる負担を紹介します。

固定資産税と管理費の継続的な発生

使っていない土地でも、所有している限り固定資産税は毎年課され、市街化区域内なら都市計画税も加わります。

住宅が建っている土地には住宅用地特例があり、200平方メートル以下の部分は課税標準が6分の1になります(出典:大阪市「住宅用地の課税標準の特例措置」)。

一方、更地にはこの特例が適用されず、建物のある土地より税の負担は重くなるのです。

管理不全と判断された場合の税負担の増加

固定資産税が6倍になるという話は、更地を相続したケースには当てはまりません。

空家等対策特別措置法は2023年12月13日施行の改正で、管理不全空家という区分を新たに設けています。

そのため、特定空家または管理不全空家として市町村から勧告を受けると、その土地は住宅用地特例の対象から外れます(出典:国土交通省「空き家対策 特設サイト」)。

なお、勧告の前には助言と指導の段階があり、認定された時点で直ちに特例が外れるわけではありません。

雑草・不法投棄による近隣トラブル

土地の管理は、遠方に住んでいても所有者の責任として残ります。

手入れが届かない土地では雑草が伸び、害虫が発生し、ごみを捨てられる場所になりがちです。

また、枯れ草への放火や倒木で被害が出たときは、管理の状況によって損害賠償を求められることもあります。

放置していた土地の相続登記を済ませる手順

相続登記は、相続人と土地を確定し、遺産分割を整え、法務局に申請するという3段階で進みます。

なお、自分で申請することもでき、実費は書類の取得手数料と登録免許税、司法書士に依頼するなら報酬が加わるでしょう。

相続人と対象の土地の確定

最初にやることは、被相続人の出生から死亡までの戸籍をすべて集めることです。

土地は、市区町村で取得できる名寄帳と固定資産税の課税明細書で洗い出します。

また、数十年放置された土地では、私道の持分や集落の共有地が課税明細に載っておらず、あとから見つかることもあります。

遺産分割協議書の作成

誰がその土地を取得するかが決まったら、内容を遺産分割協議書にまとめます。

なお、協議書に必要なのは相続人全員の署名と実印、そして印鑑証明書です。

必要書類の収集と法務局への申請

集めた戸籍と協議書に住民票や固定資産評価証明書を添え、土地を管轄する法務局へ申請します。

登録免許税は固定資産税評価額の0.4%で、評価額1,000万円の土地なら4万円です。

また、評価額100万円以下の土地は、2027年3月31日までの申請なら免税です(出典:法務局「相続登記の登録免許税の免税措置について」)。

登記を済ませたあとに残る4つの選択肢

名義を整理し終えた土地には、自分で活用する、貸す、売る、国に引き渡すという4つの出口があります。

どれが合うかは土地の条件で変わるでしょう。

ここでは、登記を済ませたあとに残る4つの選択肢を紹介します。

土地活用による収益化

アパートや駐車場、太陽光発電のように、自分が事業主体になって土地から収益を得る方法です。

舗装と区画整備で始められる月極駐車場と、建物を建てるアパート経営とでは、必要な初期投資の桁が違います。

また、長く放置されてきた土地は需要の乏しい立地にあることも多く、活用が最適解になるとは限りません。

貸し出しによる地代収入

建物を建てずに土地のまま貸す方法もあり、事業用定期借地権や資材置き場、月極駐車場としての賃貸が該当します。

初期投資が小さく契約期間の満了で土地を戻せるため、撤退の判断もしやすい方法です。

さらに、遠方に住んでいて手をかけられないなら、放置と活用の中間にある現実的な出口になります。

売却による現金化

使う予定がなく活用にも向かない土地は、売って現金に換える判断も現実的です。

売却には相続登記が終わっていることが前提で、名義が古いままでは契約に進めません。

一方で、買い手がつかない土地では価格を下げても成約に至らないこともあります。

相続土地国庫帰属制度による国への引き渡し

活用も売却もできない土地を、審査を経て国に引き取ってもらう制度があります。

相続または遺贈で土地を取得した人が対象で、審査手数料は土地1筆あたり14,000円です(出典:法務省「相続土地国庫帰属制度の概要」)。

また、承認されると負担金を納め、これは10年分の標準的な管理費相当額として原則1筆20万円です(同上)。

一方、引き取れない土地の要件は10項目あり、建物がある土地や境界が明らかでない土地は申請の段階で却下されます(出典:法務省「引き取ることができない土地の要件」)。

さらに、手数料は却下や不承認でも返還されず、申請すれば国が引き取ってくれる制度でもありません。

選択肢を絞り込むときの判断材料

4つのうちどれが合うかは、土地の法的条件と立地の需要、そして保有コストで決まるでしょう。

立地や需要の分析と複数パターンの収益シミュレーションは、土地活用コンサルティングの事業内容にも掲げられています。

以下では、選択肢を絞り込むときの判断材料を紹介します。

土地の法的条件

同じ広さの土地でも、市街化調整区域なら原則として建物を建てられません。

さらに、地目が農地であれば農地法の転用許可が要り、許可が下りない土地もあります。

また、長く放置された土地では登記簿の地目と現況がずれていることも多く、先に地目変更の登記が必要になる場合もあるでしょう。

立地と周辺の需要

駅からの距離や周辺の世帯数、人口の増減によって、成り立つ用途は変わります。

賃貸需要のない地域にアパートを建てても、空室が埋まらなければ返済だけが残ります。

そのため、需要が見込めない土地なら、売却や国庫帰属の検討が先に来る場合も現実的です。

保有コストと想定収入の比較

納税通知書に記載された固定資産税と都市計画税に、草刈りや見回りなどの実費を加えると、年間の保有コストを把握できます。

そのうえで、各選択肢の収支と並べれば、土地活用による想定利益や売却後の手取り額、国庫帰属に必要な負担金を同じ基準で比較できるのです。

また、国庫帰属における原則20万円の負担金は、10年分の標準的な管理費相当額として算定されているため、ご自身の保有コストを見極める目安にもなります。

相続した土地の放置に関するよくある質問

相続した土地を放置すると、相続登記や税金、管理責任など、さまざまな問題が生じるでしょう。

ここでは、相続した土地の放置に関するよくある質問を紹介します。

相続した土地を放置し続けると国のものになりますか

放置しているだけで、その土地が自動的に国のものになることはありません。

相続人がいれば所有権は相続人にあり、1人もいない場合でも、家庭裁判所が選任する相続財産清算人の手続きが必要です。

また、いずれ国が引き取るという前提で待つ間も、固定資産税は課され続けます。

相続登記前の土地にも固定資産税はかかりますか

登記名義が被相続人のままでも、固定資産税は実際に相続した人に課されます。

ただし、実際の運用は自治体ごとに違うため、詳しくは市区町村の資産税課へ確認してください。

相続放棄をすれば土地の管理責任もなくなりますか

相続放棄をすると、その土地を含めて一切の遺産を相続しません。

申立ての期限は、相続の開始を知った時から3か月です。

また、放棄の時点でその財産を現に占有していた人は、清算人などに引き渡すまで保存の義務を負います(民法第940条)。

なお、同居していなかった相続人まで管理を求められるわけではありません。

相続人のうち1人だけで相続登記を申請できますか

法定相続分による登記と相続人申告登記は、相続人が1人でも申請できます。

ただし、法定相続分で登記すると名義は共有になり、売却も活用も全員の合意が要る状態です。

単独名義にするには、遺言または遺産分割協議にもとづく登記が必要になります。

まとめ

相続した土地の放置には、相続登記の放置と土地そのものの放置の2つの状態があります。

前者には3年以内の期限と10万円以下の過料があり、後者は期限がない代わりに費用が毎年かかる状態です。

また、登記を済ませても終わりではなく、活用、賃貸、売却、国庫帰属という4つの選択肢がそのあとに残ります。

そこで、どの立場にも寄らずに比べたいときの選択肢になるのが第三者への相談です。株式会社土地活用コンサルティングは、土地のポテンシャル分析と収益シミュレーションをもとに判断材料を提示しています。

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