コラム
新築アパート投資の利回り相場5.98%と失敗を防ぐ判断軸

新築アパート投資に踏み切るべきかどうかは、利回りの高さだけでは決められません。
健美家に登録された一棟アパートの表面利回りは、築10年未満で5.98%、築20年以上で9.48%です。
この記事では、新築を選ぶ理由と抱えるリスクを並べ、判断に使う数字を整理しました。
新築アパート投資の3つの始め方
新築アパート投資の始め方は、所有地に建てる・土地を買って建てる・建売を買うの3通りです。 家賃収入から借入返済と管理費などの経費を引いた残りが、手元に残る利益になります。
以下で、具体的に見ていきましょう。
所有地にアパートを新築する方法
相続などで土地を持っている人は、土地取得費がかからない分だけ初期投資を抑えられます。 建物が建てば住宅用地の特例が適用され、200平方メートル以下の部分は固定資産税の課税標準が6分の1になります(出典:総務省「固定資産税の概要」)。
ただし、土地の形も立地も動かせないため、借り手の少ないエリアでは打ち手が限られます。
土地を購入してアパートを新築する方法
立地と建物設計の両方を自分で選べる点が、この進め方の最大の利点です。 兼業大家の事例では、60坪1,000万円の土地に1LDK4室を建てて表面利回り9%を確保しています。
投資総額は3通りのなかで最も大きくなり、失敗の正体はたいてい建物ではなく土地選定にあります。
完成済みの新築アパート(建売)を購入する方法
販売会社が企画・建築した物件を1棟買いする方法で、手間と期間は最も短く済みます。 企画の自由度がない代わりに、販売会社の利益が価格に乗る分だけ利回りは下がりがちです。
ある販売会社は、供給者側の視点に寄ると初期賃料を高めに設定しがちになると自ら指摘しています。
新築アパート投資の利回りはどこまで期待できるか
健美家に登録された全国の一棟アパートでは、表面利回りが築10年未満で5.98%です(出典:健美家「収益物件 市場動向 四半期レポート」2026年4〜6月期)。 平均価格は1棟あたり9,004万円で、投じる金額はエリアで大きく変わります。
ここでは、実質利回りとの違いや目安を解説します。
表面利回りと実質利回りの違い
広告に並ぶ利回りのほとんどは、年間家賃収入を物件価格で割って100を掛けた表面利回りです。 空室も管理費も固定資産税も引く前の数字なので、そのまま手残りにはなりません。
実質利回りでは、家賃収入から管理費・修繕費・固定資産税などの運営経費を差し引きます。
金融機関が見ているのは、年間の純収益を年間返済額で割ったDSCRという指標です。
借りられるかどうかではなく返せるかどうかを測る数字なので、投資家側も同じ目線を持ちます。
エリア別・築年数別の利回り目安
エリア別に見ると、築10年未満の表面利回りは1都3県5.82%、大阪市5.88%とほぼ並びます。 平均価格は1都3県1億3,935万円、大阪市1億2,958万円で、差は利回りより価格に出ています。
実際の売り出しでは、東京都杉並区の駅徒歩4分の木造新築が表面4.80%でした(2026年8月時点)。
都心の低い利回りは、空室が出にくいことへの対価です。
新築アパート投資のメリット
新築を選ぶ利点は、空室の出にくさ・融資条件・設計の自由度・修繕費の4つです。 いずれも中古との比較で浮かび上がる差であり、効果が続く期間はそれぞれ違います。
以下で、4つのメリットを詳しく解説します。
空室リスクの低さ
設備も間取りも現在の入居者ニーズに合っているため、初回の入居付けは有利に進みます。 ただし、この優位が働くのは、築浅の数年だけです。
また、空室の主因は築年数ではなく賃貸需要にあり、需要のない立地では新築でも部屋は埋まりません。
融資条件の有利さ
木造アパートの法定耐用年数は22年で、残存期間が長いほど担保評価は出やすくなります(出典:国税庁「主な減価償却資産の耐用年数表」)。 借入期間を長く取れれば月々の返済は軽くなり、初期のキャッシュフローは安定します。
一方で期間が延びるほど総支払利息は増えるので、返済総額でも比べておきたいところです。
設計・設備の自由度の高さ
エリアの需要から逆算して間取り・戸数・設備を決められる点が、土地からの新築の強みです。
宅配ボックスや無料インターネットのように、成約率へ効く設備も最初から織り込めます。
ただし、設備は入れるほど良いのではなく、上乗せできる家賃と導入費用の回収年数で選ぶものです。
修繕費の低さ
引き渡し直後は大規模修繕が発生せず、最初の数年の運営コストは低く収まります。 とはいえ修繕費がゼロなのではなく、10年目前後から外壁・屋根・給湯器の支出が始まります。
劣化対策等級3は、大規模改修までの期間をおよそ75〜90年に延ばす水準です(出典:住宅性能評価・表示協会「柱や土台などの耐久性」)。
修繕積立は、初年度から収支計画に入れておきます。
新築アパート投資のデメリット
新築の弱点は、初期投資の大きさ・家賃の下落・税務によるキャッシュフロー悪化・事業者リスクです。 いずれも購入前に数字で見積もれるもので、見積もれるかどうかが判断材料になります。
以下の4点を事前に押さえておくとよいでしょう。
初期費用と借入額が大きくなるリスク
中古より物件価格が高い分だけ、自己資金も借入額も膨らみます。 投資家の事例では、土地から取得する一棟アパートの総事業費が6,000万〜8,000万円規模でした。
都心の建売では1億5,000万円を超える売り出しもあり、いずれも個別の事例として見る数字です。
いくら借りられるかより、いくら残して買うかを先に決めておきます。
新築プレミアム終了後の家賃下落リスク
新築時は相場より高い賃料を設定できますが、最初の入居者が退去すると中古としての募集です。 木造の民営家賃は、経年で年率0.886%ずつ下がるという推計が出ています(出典:総務省統計局「民営家賃の経年変化の推計」2021年1月公表)。
読み違えの元になるのは、新築の割増分が初回の退去で一度に外れる点です。
収支計画は新築時の賃料ではなく、10年後の想定賃料で組み直します。
デッドクロスによるキャッシュフロー悪化リスク
減価償却費が減る一方で元金返済が増えると、帳簿上は黒字なのに手元現金が減ります。 木造の耐用年数は22年で、償却が終われば経費として引ける金額は一気に落ちる仕組みです。
9,000万円・表面6.5〜7.5%の新築木造で、20年台にキャッシュフローが赤字化する試算もあります。
施工会社の倒産リスク
建築を伴う場合は、工事の途中で施工会社が倒産する事態も想定しておきます。 2026年上半期の建設業の倒産は1,043件で、前年同期を57件上回りました(出典:帝国データバンク「建設業の倒産・休廃業解散動向」)。
完成保証の有無と、工事の出来高に応じた支払い条件を契約前に確かめます。
新築と中古のどちらを選ぶかの判断軸
新築か中古かは優劣ではなく、利回りを取るか融資と出口の安定を取るかで決まります。 全国の築年数別で見ると、表面利回りの差は築10年未満と築20年以上で約3.5ポイントです。 1都3県では約1.8ポイントまで縮み、その差を修繕費と空室率が埋められるかを試算します。
利回りで比較した場合
築年数別に並べると、全国の一棟アパートは築10年未満5.98%、築10年台6.74%、築20年以上9.48%です(出典:健美家 四半期レポート)。 1都3県では5.82%・6.17%・7.65%となり、都市部ほど築年数による差は小さくなります。
全国平均で見れば築20年以上の価格は6,082万円で、築10年未満の1億3,266万円の半分以下でした。
修繕の見込みを入れた実質利回りで並べ直すと、差は表面ほど開きません。
融資期間と出口で比較した場合
新築木造なら22年前後を基準に長期で組みやすく、築古では期間が短く月々の返済が重くなります。
買主の融資年数が短いほど価格は伸びにくく、築年数が進むほど利回りを上げないと売れません。
出口の売りやすさは感覚ではなく、次の買主の返済計画から逆算して見積もります。
新築アパート投資の向き・不向きを分ける条件
向き不向きを分けるのは年収や職業ではなく、賃貸需要のある土地を持っているかどうかです。 もう1つの分かれ目は、利回りと安定のどちらを優先するかという順位づけにあります。
以下で具体的に解説します。
新築アパート投資が向いている人
賃貸需要のある土地をすでに持ち、月々の返済を抑えて長期で保有したい人に向きます。
相続税の評価でも、アパートが建つ土地は貸家建付地として自用地より低く評価されます(出典:国税庁「No.4614 貸家建付地の評価」)。
土地を持っているだけでは足りず、そこに借り手がいることが条件になります。
新築アパート投資が向いていない人
手元資金が薄い人、短期で利益を確定したい人、土地なしで高利回りを狙う人には不利に働きます。
目的が資産形成の速度なら、築古の高利回り物件や他の投資手法のほうが合うかもしれません。
土地の活用が目的なら、駐車場や売却まで並べて比べたうえで結論を出します。
新築アパート投資を始めるまでの流れ
新築アパートは、目標設定から入居募集まで5つの段階を踏んで完成します。 途中には土地の買い付けと工事請負契約という、後戻りできない意思決定が挟まります。
そこでここでは、段階ごとにやるべきことを、順に見ていきましょう。
目標設定と市場調査
何のためにどの規模まで増やすのかを金額で言語化する作業が、すべての出発点です。 純資産1億円なのか毎月の家賃50万円なのかで、選ぶ物件も借入の組み方も変わります。
資金計画と融資の打診
自己資金・借入額・返済期間の組み合わせは、3パターン以上つくって比べます。 1行で決めずに複数行を回るのが前提で、条件は面談を重ねるほど見えてきます。
土地取得と建築プランの決定
土地の売買契約と建築プランの確定は、並行して進みます。 融資が下りなかったときに契約を白紙へ戻せるよう、融資特約を付けて買い付けます。
施工会社の選定と着工
見積・仕様・工期・保証を横に並べられるだけの候補社数を、先に確保します。 地域の工務店へ約80社に電話し、面談まで進んだのは10社未満という投資家の例もあります。
入居募集と引き渡し
竣工前から募集を始め、引き渡し日に入居が決まっている状態を目標に置きます。 空室が1か月延びるだけで初年度の実質利回りは落ちるため、管理会社の募集力も見ます。
失敗を防ぐための5つのチェックポイント
契約前に確かめたいのは、実質利回り・賃貸需要・提案者の立場・出口・建てない選択肢の5点です。 いずれも自分で数字を見るか、利害関係のない第三者に見てもらえば潰せる論点になります。
失敗を回避するためにも、以下の5つの項目を事前に押さえておきましょう。
実質利回りとキャッシュフローの試算
販売資料の表面利回りをそのまま使わず、空室率と運営経費を入れて計算し直します。 事業として成立するかどうかは、返済後に手元へ残る金額まで出して初めて見える数字です。
楽観・標準・悲観の3パターンで試算し、金利上昇と空室率の悪化は悲観側に入れておきます。
複数パターンの収益シミュレーションを第三者に組んでもらう方法もあるでしょう。
賃貸需要の裏付け調査
対象エリアの人口動態と、周辺の同条件物件の募集賃料・空室数を自分で確かめます。
駅からの距離は分数だけでなく、坂の有無まで含めて現地を歩いて確かめたい項目です。
平坦な道で徒歩10分以内を基準に置く会社もあり、机上の条件と体感には差が出ます。
提案者の利益構造の確認
提案してきた会社が売主なのか仲介なのか、報酬がどこから発生するのかを確かめます。 1,000万円の戸建てと1億円の新築アパートでは、仲介側へ入る手数料の桁が違います。
運営者情報と収益の出どころを開示している相手かどうかも、判断材料の1つです。
出口戦略の事前設計
購入前に、売却の時期と想定価格を決めておきます。 何年後にいくらで売れれば成立するのかを数字にすると、保有中に取るべき行動も決まります。
築年数が進むほど買主は高い利回りを求めるため、新築時と同じ価格では売れません。
「建てない」選択肢との比較
アパートを建てる案は、駐車場・トランクルーム・売却・保有継続と同じ条件で並べます。 土地の形状や需要によっては、建てないほうが手元に残る金額は多くなります。
建築会社にも販売会社にも、建てないという結論を出す動機はありません。
新築アパート投資に関するよくある質問
最後に、本文で扱いきれなかった判断論点を3つ取り上げます。 細かい相談内容は、土地活用のよくある質問にもまとまっています。
住宅ローンは使えるか
投資目的のアパート取得に住宅ローンは使えず、アパートローンなどの事業用ローンになります。 フラット35も、第三者へ賃貸する目的の物件には利用できないと明示されています(参考:住宅金融支援機構「フラット35の不適正利用」)。
虚偽の内容で借りた場合は残債の一括返済を求められ、詐欺罪に問われることもあるため、注意が必要です。
ただし、自宅部分が一定の面積を占める賃貸併用住宅なら使える例もあり、要件は金融機関ごとに違います。
相続税対策として有効か
アパートが建つ土地は貸家建付地として扱われ、更地よりも相続税評価額が下がります。 評価額は自用地価額から借地権割合・借家権割合・賃貸割合を掛けた分を引いて求めます(出典:国税庁「貸家建付地の評価」)。
節税額だけで判断すると、賃貸経営としては赤字という結果にもなりかねません。
建築費が高騰している時期に始めてよいか
建築費の上昇は初期投資を押し上げ、そのまま利回りを下げる方向へ働きます。 価格転嫁できずに行き詰まる物価高倒産は、2026年上半期の木造建築工事で42件でした(出典:帝国データバンク「物価高倒産の動向」)。
一方で賃料と資産価値も上がる局面があり、時期そのものより事業計画の成立条件で判断します。
この利回りとこの金利なら成立する、という線を先に引いておきたいところです。
まとめ
新築は空室の出にくさと融資条件で有利に働く一方、初期投資の大きさ・家賃下落・デッドクロスという弱点を抱えます。 判断を分けるのは、賃貸需要のある土地を持っているかどうかと、利回りと安定のどちらを優先するかです。
契約前には、実質利回りの試算・需要の裏づけ・提案者の立場・出口・建てない選択肢の5点を確かめます。
建築ありきで比べれば、建てないという結論は最初から選択肢に入りません。
土地活用コンサルティングのように、建築会社にも不動産会社にも属さない立場へ相談する方法もあります。

